やれ、やっちゃれ!でもこれじゃ教条的な宣伝映画だよ!の残念作『ハルビン』

基本情報

Harbin ★★★
2025 スコープサイズ 114分 @イオンシネマ京都桂川


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感想

安重根伊藤博文暗殺事件を描く、サスペンス映画。例えば・・・安倍晋三は大嫌いだけど、じゃ彼を銃撃した山上容疑者は英雄なのか?トランプ大王を誰かが暗殺したとして、その犯人は英雄?普通そうは思わんだろ?・・・という話で、安重根を単純に礼賛する姿勢は無理がある。そこに尽きる。

■物語の活劇としての構成にはちゃんと工夫のあとがあり、それなりに納得できる構成にはなっているけど、あまりサスペンスが効いていないし、そもそも、登場人物がみんなヒゲ生やして、長髪で、帽子被っているので、見分けがつかない。このあたり、監督がジャッジするべきところだけど、敢えてなのか?ハルビン駅での襲撃も、ロシア兵たちが大勢いるのに、誰も飛び出したテロリストを制止しようとしないのは謎演出だったよなあ。そうそう、素人目にもかなり不細工な回想シーンも気になるところで、舞台裏でなにかあったのかなあと勘ぐりたくもなる。

■一番気になったのは伊藤博文をどう描くかで、そこに映画としての誠実さが顕現するはずだから。リリー・フランキーが演じるじてんで、現在の日本の芸能界の層の薄さを露呈しているけど、演技的には決して悪くはない。日本語の台詞が熟れていないのは、ちゃんと日本人脚本家を入れて合作すればいいのにと思うけど。

■当時の韓国が後進国でそのポテンシャルを発揮できなかったのは、「国家」指導者が不甲斐なく、支配思想の儒生が悪いためで、指導層はだめだけど、民衆はいざ国難となれば英雄を生み出すから良い素地を持っていると、伊藤も認めている。実際に、そう考えていたらしいから、ちゃんと調べて書いている(当たり前だけど)。なので、このラインをもっと本筋に絡めて、伊藤を暗殺する意義が本来あるのか?本当にあったのか?という点も冷静に再検討するべきだった。いま、わざわざ映画化する意義があるとすれば、そこだろうに。伊藤を殺しはしたけど、それは徒労ではなかったか?そんな引いた視点がない。それによって、事件の再定義も可能だし、劇的なサスペンスを稼働することができるはずなのに。東映やくざ映画なら、そこまで行くけどね。

■例えば、橋本忍なんて、古くから伝わる時代劇の出し物を逆転して、大悪党と言われるこの男は本当に悪党だったのか?逆じゃないのか?と有名事件を読み直すことで、戦後時代劇の刷新を行ったけど、そうした視点を参考にすべきなのだ。

安重根は韓国では英雄と言われるけど、ほんとに英雄だったのか?その相対化の視点が、必要だった。その意味では、肝心の歴史事件の捉え方が浅いし、歴史を単純化しすぎで、それが映画としての強度を毀損している。

安重根はラストに、こんな台詞を言えばよかったのだ。「任侠道?そんなものは俺にはねぇ! 俺は...ただのケチな人殺しだ…」(『博奕打ち 総長賭博』より)


参考

さいきん伊藤博文の再評価が進んでいるようです。実際、今の日本の国の形を構想した中心人物のひとりだったようだし。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
こんな映画もありましたな。
maricozy.hatenablog.jp
監督のウ・ミンホは、こっちのほうが良かったよね。
maricozy.hatenablog.jp
映画が物足りないので、こんな本を読みました。
maricozy.hatenablog.jp

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