海賊とよばれた男
2017 スコープサイズ 145分
イオンシネマ京都桂川
原作■百田尚樹 脚本■山崎貴
撮影■柴崎幸三 美術■上條安里
照明■上田なりゆき 音楽■佐藤直紀
VFXディレクター■渋谷紀代子
監督・VFX■山崎貴
■出光興産の創始者の一代記を山崎貴がおなじみの座組で映画化したもの。戦前の下関、戦中の満州、戦後の復興、タンカーの建造、イランへの石油買い付けといった大イベントを回想をはさみながらつづる年代記映画。白組謹製のVFXもふんだんに盛り込まれて、大作感は万全だが、実際はそれほどの大作ではない。
■おそらく原作の小説のほうが経済小説、情報小説として読み応えがあると思われる。映画版はダイジェストという印象をぬぐえないし、ドラマの構築にコクとか綾が少ないので、わかりやすいのはいいとして、大人の観客には少々食い足りないだろう。クライマックスの日章丸事件にしても、粗筋を映像化しましたという程度で大したサスペンスもないし、捻りもない。
■VFXの見どころは多いが、どれもハリウッドの大作と質的には十分対抗できているがボリューム感ではどうしても負ける。冒頭の東京大空襲の場面もありえないキャメラワークがかえって説得力を削いでいる。ケレン味はいいが、こうした無理やりなキャメラワークは完全に食傷気味。本作のあとで『ローグ・ワン』観ちゃったから、余計にそう感じるなあ。タンカーなんてカットによっては実写にしか見えないが、それに頼っちゃいけないよな。
■大物起業家というのは特別な強運を持って生まれてきているんだなあ、そういう特別な人は確かにいるもんだよなあ、自分はそうじゃないけど、といった凡人的な感想しか浮かんでこないよね。96歳で綾瀬はるかのことを思い出して涙するクライマックスも、凡人なら家族の顔すらわからなくなっている年齢だよね。いわば特別に優れた人は凄いなあという映画ですかね。凡人たる観客にとっても身につまされる見せ方の工夫が足りないというのが最大の欠点でしょうね。綾瀬はるかの出番が少ないのも欠点だぞ。
■ほんとにこういう映画こそ、プロの脚本家に任せないといけないよね。そういえばスクリーンのクレジットでは脚本にもうひとりクレジットされていた気がするけど、調べても出てこないなあ。これも謎だ。