暴走姐御降臨?否、暴走するのはサンドラ・ブロックではなく路線バスと地下鉄だ!『スピード』

基本情報

SPEED ★★★☆
1994 スコープサイズ 116分 @Blu-ray

感想

■随分と久しぶりにブルーレイの吹替版で鑑賞。吹替版は初めて観たけど、なんといっても、デニス・ホッパーを吹き替えた穂積隆信の演技が素晴らしくて、聞き惚れた。デニス・ホッパーの粘着質の演技と全く齟齬を感じさせず、でも誰が聞いても穂積隆信でしかないという奇跡的な個性は、まさに不世出なものだろう。この吹替版は必見ですよ。

■第一幕がビルのエレベータの爆破事件、第二幕が路線バスの暴走事件、第三幕が地下鉄の決闘という、映画が三本作れそうなネタを惜しげもなくつぎ込んでこれでもかと繰り出すアクション大作。といっても、それほど大物俳優は出ていないから、比較的安価に製作された模様。ジェフ・ダニエルズB級映画でしょこれ、というスタンスで撮影に参加したらしい。

■第一幕はミニチュアとかCGとかマット画合成とかでかなりVFXが多用されているが、なんといっても本作の肝は第二幕をオールロケで撮りきったところに価値があり、これは監督ヤン・デ・ボンの素敵なこだわり。第三幕の地下鉄シーンなんて合成もふんだんだし、地下鉄脱線の大規模なミニチュアワークもあるし、ある意味で見慣れた大作アクション映画の光景だけど、第二幕の路線バス暴走シーンは今見ても見応えがある。

■もちろん『新幹線大爆破』とか『東京湾炎上』とかのパニック映画のアイディアをうまく援用しながら、ロケで生身の役者が演じるスリリングさに、この映画の輝きの源泉がある。『新幹線大爆破』だとミニチュアや東映名物の雑なスクリーンプロセスだったりするけど、こちらは全部本物ですよ!という説得力は不滅の魅力だ。ちなみに、ホントのネタ元は黒澤明の『暴走機関車』らしいけどね。

■高速移動する物体に、いかに接近し、いかに取り付き、いかに乗り込み、いかに脱出するかという、移動と距離を巡る物理的な映画サスペンスの見本市といった感じで、路線バスに並走する警察車両、路線バスの下に潜り込む小型台車、床板を使用した脱出と名シーンが続く。

■ちなみに、暴走するのはもちろんサンドラ・ブロックではなく、路線バスや地下鉄であって、サンディー姐さんではありません。ここでは、まだ生きの良い小娘といった風情ですからね。乳母車を跳ね飛ばす場面で、おなじみの手をひらひらさせるカワイイ(?)慌てぶりも登場しますよ。正直、第三幕は蛇足でサンディーの見せ場もないけど、第二幕での快演は最高ですね。


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