狂っているのは誰だ?他人を責める前にまず自分を顧みるべし!『何もかも狂ってやがる』

基本情報

何もかも狂ってやがる ★★☆
1962 スコープサイズ(モノクロ) 77分 @アマプラ
企画:大塚和 脚本:大工原正泰 撮影:井上莞 照明:宮崎清 美術:岡田戸夢 音楽:渡辺宙明 監督:若杉光夫

感想

■高校生の淳(寺田誠)は学校では教師にバイキン扱いされるし、カンニングの濡れ衣をきせられるし、警察には事実誤認の恐喝でしょっぴかれ、さすがにやってられるか!とグレ始めるが。。。

■というお話だったかどうかは定かでない。大塚和が日活から獲得した貴重な民芸映画社枠の番組で、いつものスタッフで手慣れた仕事を魅せる。しかしなんといっても、本作の見所はロケ撮影のリアリズムである。リマスターの威力もあり、主人公の住む荒川のアパート(?)付近の町並みの情景が、それだけで凄いスペクタクルな見どころとなっている。あのアパート、実際ものすごい建築なんだけど、有名な物件なのかなあ。

■日活本線ではない外注扱いの番組なので、製作費はかなり少なくて、基本的にロケとロケセットで撮りあげるスタイルだが、本作のロケはその路線の中でも特に念入りだ。しかも、夜間ロケの照明が妙に入念で、姫田チームを凌駕している気もするほど。人間だけでなく、その背後に広がる広大な空間ごと描写する社会派リアリズム演出の一つの頂点かもしれない。

■ただ、ドラマとしては欠点が多くて、この主人公の到達する結論は納得できるものではない。このまま大学へ進学することにも疑問をいだき、港湾労働者として働くことで、労働者としての芯のある手応えを感じるところで終わるけど、さすがに安易で教条的な結論だ。

■特に困るのはその前の場面で、流しのギター弾きの佐野浅夫を、木賃宿でポケットの小銭をくすねただろうと攻め上げ、彼の唯一の生活の糧である安ギターを粉々に破砕するところで、いくらなんでもやり過ぎで酷い。この行動には全く同情の余地がなく、ただ単純に過剰防衛で、ひどすぎる。佐野浅夫に同情するしかない。彼はその後どうやって生き延びたのか?

吉行和子が演じるOLが信欣三演じる上司に言い寄られるのをとっちめるあたりのエピソードも演出も悪くないので、この部分を最終的に活かした第三幕が望ましかったと思うな。吉行和子のアパートのシーンなんて、色っぽい潤いの少ない若杉光夫の硬派路線の映画にしてはエロス要素がちゃんと盛られているし、吉行和子も好演だ。

■ちなみに、主人公の不甲斐ない父親を例によっておなじみの大森義夫劇団民藝が演じているのだが、どこかで見た風貌だなあと考えてみると、、、ああ樋口真嗣にそっくりだわ!これで腑に落ちてぐっすり眠れるぞ。

■ちなみに、主演の寺田誠は現在の声優、麦人です。

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