ゼロ・グラビティ ★★★★

GRAVITY
2013 スコープサイズ 91分
MOVIX京都

■この映画を2D版で観ても、監督の意図の半分も伝わらないかもしれないが、2D版で観ても十分に画期的な映画であることは理解できる。というか、十分に眩暈がする映画体験でしたよ。こんなマジックのような映像体験は、10年に一度クラスのもので、アルフォンソ・キュアロンがここまで到達してことに脅威を感じた。アルフォンソ・キュアロンの映画はなぜか結構観ていて、『リトル・プリンセス』(これはビデオで)も『大いなる遺産』も観ているし、特にちゃんと劇場で観た『大いなる遺産』はかなり鮮烈な印象が未だに残っている。でも、『トゥモロー・ワールド』の衝撃が何よりも鮮烈。本作はさらにその先の前人未到の境地に達した。

■宇宙空間の無重力状態をここまで執拗に描いた映画は今後もそうそう無いだろうから、それだけでも孤高の映画だが、映像革命だけではなく、ドラマも案外しっかりしている点が立派。娘の死により心を閉ざしているヒロインの心の再生と、無重力で死の世界である宇宙空間から重力が支配する大地への帰還を重ねあわせ、個人的な精神的な成長という主題と生命の進化をダブらせて見せようとする、なかなか気宇壮大で立派な脚本で、まさにSFの醍醐味。

■主演のサンドラ・ブロックがまた非常に良くて、ちゃんと顔とか姿が現われるのは映画の後半になってからだが、思春期の少女のような傷つきやすさと強靭な意志の力を共存させる引き締まった肢体の作り込みが見事。もう盛りの過ぎた中年女優と思っていたが、なんと回春している!

■でも、これIMAX3Dなんかで観たら、冒頭の13分の長廻しの場面で間違いなく酔うと思うが、案外大丈夫なのかなあ?


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