基本情報
人間に賭けるな ★★★☆
1964 スコープサイズ(モノクロ) 84分 @アマプラ
企画:水の江滝子 原作:寺内大吉 脚本:森川英太郎、田村孟 撮影:間宮義雄 照明:安藤真之助 美術:佐谷晃能 音楽:伊部晴美 監督:前田満州夫
感想
■会社の公金や自分の子どもの出産費まで競輪ですってしまうだらしないサラリーマン(藤村有弘)は、競輪場で知り合った女(渡辺美佐子)から言われるまま飯田選手(川地民夫)に賭けると大穴を当てる。その女は服役中のヤクザの組長(二本柳寛)の妻だったが、組長によって八百長に利用されていた飯田が自由に走って勝つことに賭け続けていた。。。
■寺内大吉の競輪小説はすでに『競輪上人行状記』が製作されて興行的には振るわなかったが、演技も演出もハイレベルで内容的には傑作だった。というか、日本映画史に残る傑作だと個人的には感じているが、その姉妹篇ともいえる本作も、なかなかの異色作だし、力作。
■なぜか脚本を松竹ヌーベルバーグ派が書いているのもこだわりがありそうだが、人間は八百長をやるのに、日本人はなぜ人間に賭けるのか?(馬鹿じゃないのか?)と外人さんのコメントを冒頭に紹介しておいて、主人公渡辺美佐子の狂気に似た愛を描くのがこの映画のテーマ。なぜ、人間に賭け続けるのか?というテーマを設定して、かなり高踏的な主題展開を見せるから、単なるギャンブル風俗映画ではない。
■愛する人間が様々な桎梏を外れて自由を手にし、自分の意志で走り出すことを願って、そのために自分のすべてを投げ出して顧みない女の姿に、自己犠牲という宗教的な究極の愛の姿を重ね合わせる。前作『競輪上人行状記』では仏教(浄土宗)の立場から、煩悩から逃れようのない人間の業を、その汚濁で猥雑な姿のまま掬い上げる仏の存在を補助線として描いたが、本作ではキリスト教がその代わりに措定されるところが非常にユニーク。だから、競輪場の打鐘が教会の鐘に重ね合わされるし、藤村と渡辺が結ばれる大阪の安宿の壁面には様々な悪魔(あるいは地獄の業火に焼かれる罪人?)のレリーフが象徴的に浮かび上がる。
■『競輪上人』で破滅的な競輪狂を演じた渡辺美佐子が堂々の主演で、ここでも競輪選手に入れあげて破滅する。一方で競輪選手には組長の姪の結城美栄子という愛人もあり、競輪から足を洗うことを約束させようとするが、結局は渡辺美佐子も結城美栄子も棄てられる。つまり競輪という、欲深くて汚濁にまみれやすい人間に賭けるギャンブルの世界を舞台に、愛の不毛と人間の自由意志の有無を問う、いっちょ前の哲学映画なのだ。
www.nikkatsu.com
参考
dig-mov.net
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渡辺美佐子って、TBSの『ムー』とか『ムー一族』のホームドラマの優しいおかあさんのイメージが強いのだが、日活映画時代にはいろんな役柄を演じて、しかも上手いので驚きますね。若い頃からおばさん役だったり、美人役だったり、役柄が幅広い。
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