これは沢口靖子版「積木くずし」か?『松本清張 疑惑』

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田村正和追悼番組として再放送された『疑惑』は2009年に放送されたバージョン。もちろん映画版が有名だが、テレビでの再三リメイクされている人気作。脚本はこの原作を何度もドラマ化している竹山洋、音楽が『ゴジラS.P』でも腕のいいところを見せている沢田完、演出は正和の座付き演出家(?)藤田明二

■なんといっても本作は田村正和沢口靖子の共演、しかも沢口靖子がオニクマこと球磨子を演じるというところが最大の見もの。実に12年前の作品だが、最近の『科捜研の女』と比べても全く変化がないというのがミラクルでマジック。本作では映像のルック調整で肌をきれいに見せないようにしているので、逆に最近の作品のほうが綺麗だったりする。

■最終的には正和が事件の真相を解明して、というか強引に推理して、オニクマは無理心中の犠牲者であったことになるのだが、この推理を正和が滔々とポエムのように物語るのがクライマックスで、沢口靖子が泣くという、おなじみの構成。このあたりはさすがに失笑を誘うが、でも、本作の見所は前半に固まっていると思う。

■まず田村正和津川雅彦の掛け合いが最高に素晴らしい。正和のナルシス演技と津川の円熟の助演が意外な化学反応を起こし、アドリブ的な雰囲気を織り交ぜての共演場面は妙に見ごたえがある。なんとなく世界観が異なる異質の演技のぶつかり合いが不思議なセッションを奏でる。

■一方、そこにからむ沢口靖子は、東宝シンデレラの辞書にはないはずの口汚い台詞を吐き散らし、おじさんたちを挑発する。どうみても悪女には見えないそのルックから、罵詈雑言、悪口雑言が飛び出すさまは、まさにあれ、少女の家庭内暴力を悪魔憑きと解釈した映画版『積木くずし』を彷彿させる。一切目の表情を変化させず、お前、殺すぞ!とか舐めるなよ!とかヤンキーなパワーワードを投げつける様は、球磨子の凶暴な性格から自発的に発するものというよりも、たしかに何かに憑かれたようにしか見えないのだ。そこが妙な怖さを醸し出して、沢口靖子にしか演じられないみたことのない種類の怖さを発散する。音楽は完全に『サイコ』をモチーフとしているので、オニクマの二面性を表現しているし、その怖さの表現が演出上の狙いであることを明示している。

■演出の藤田明二沢口靖子の見せ方をよく心得ていて、目力の籠もったアップショットを適切にインサートして、凶悪さを切れ良く描いて、非常にカッコいい。沢口靖子ファンは必見の作品ですよ。こんな役を演っているのは、正直今回初めて知ったので、観られて素直に嬉しいよ。オニクマが雨の埠頭の海面に浮かび上がって、防波堤のタラップを這い上がるあたりの演出は、なかなか上出来で、見事なロケ撮影。

■最終的にお馴染みの泣き落としを正和がナルシスに演じるので、困ってしまうのだが、やはり前半の懐かしい台詞回しとか、弁護士なのにクラブでジャズピアノを弾いているとか、やはり正和じゃないとありえないファンタジックなギミックの数々が素直に面白い。


参考

maricozy.hatenablog.jp
田村正和の追悼のために。比較的最近の単発ドラマを結構観てますね。『鹿鳴館』は意外な佳作だったので、再放送してほしいなあ。非常にいい企画でしたよ、あれは。あと『上意討ち 拝領妻始末』も良作ですよ。映画版はもちろん良いけど、正和版も意外と良かったのです。
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残念ながら沢口靖子については意外と記事がないなあ。『女ひとり ミヤコ蝶々物語』はなかなかの見ものでしたよ。褒めてますよ!このドラマとほぼ同じ時期の仕事ですよ!?
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