『真田風雲録』

基本情報

真田風雲録 ★★★★
1963/ビスタサイズトリミング版
(2001/8/23 よみうりTV録画)
原作/福田善之 
脚本/福田善之,小野竜之介,神波史男
撮影/古谷 伸 照明/
美術/井川徳道 音楽/林 光
監督/加藤 泰

感想(旧HPより転載)

 幼子の頃隕石の放射線を浴びて超能力を身につけた佐助(中村錦之介)は戦国の世の終わりに生まれついたはぐれ者お霧(渡辺美佐子)たち一行とともに、戦いの中に生きる意味を求めて真田幸村千秋実)の配下に入る。豊臣方の軍勢として徳川の軍勢をゲリラ戦法で攪乱するが、その背後で豊臣と徳川の間で和議の密約が交わされていた。和議に意義を唱えて徳川方に乱入する真田十勇士。だが後に続く武将はなく、それどころか和議破りの十勇士を討ち取る命令が豊臣方の家臣(佐藤慶)から発せられる。挟撃を受け、敗走する彼らに明日はあるのか?

 60年安保の挫折感を、大阪冬の陣、夏の陣を背景にして活躍した真田隊の結成から破局に到る顛末に託して描き出した舞台劇の映画化で、ミュージカル時代劇という体裁ながら神波史男が脚本に参加していることからみても明らかなとおり、硬骨の政治的アクション映画の決定版といえる傑作である。しかも、主人公に超能力者を据えるという大胆な着想により、SFアクション映画としての要素までも加味されており、到底一筋縄ではいかない記念碑的傑作として孤高の位置を今なお保っている。

 豊臣家の参謀で真田隊の真情を実は最も深く理解し、和議破りに武将達が追随することを誰よりも期待しながら、その立場上本心と裏腹に真田隊の追撃命令を冷酷に発する屈折した人物を佐藤慶に演じさせたキャスティングが抜群で、もう少し時代が下ればそのまま岸田森のはまり役にもなっていたに違いない役どころを余すところなく演じきる。もっとも、佐藤慶の演技云々よりもその風貌だけを映画は期待しているのかもしれないが。

 真田十勇士の和議破りの突撃に安保闘争の学生達の姿をきわめて直截に重ね合わせているあたりが当時はまだ様々な受け取られ方をしたのだろうが、今観れば実に良くできた”闘争”のあり方を巡るアクション映画であり、その物語や加藤泰独自の人を喰った様式的映画表現には更なる普遍性が確認できるだろう。

 何も学生運動に限らず、今現在会社で、学校で、官庁で、様々な職場や生活の場で旧態依然の体制に対して孤独な闘いを闘い続けている多くの人々の、闘いの中に自分の居場所を求め続けるそうした生き方に対して、今なお多くの教訓と歓びを示し続けている。そういう意味でも間違いなくこの映画は傑作と呼ぶに相応しい実質を具備している。

 さらに、増村保造の「盲獣」「女体」等の作品や吉田喜重の「秋津温泉」等のメロディが今なお忘れがたい林光がここでも素晴らしいテーマ曲を提供しており、真田隊の悲喜劇を熱く寂しく歌い上げている。林光の映画音楽はもっと注目されるべきだと思うぞ。

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