横山秀夫サスペンス 密室の抜け穴 ★★★☆

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横山秀夫サスペンス 密室の抜け穴
2003 ヴィスタサイズ ?分
BS TBS録画
原作■横山秀夫 脚本■森岡利行
撮影■安田圭 照明■?
監督■榎戸耕史

■製作がコブラピクチャーズからアミューズに移った本作、もともと地味な(オッサン好みの)骨太のサスペンスだが、なかでも異色作で、後半はほとんどが県警内の会議室の場面なのだ。張り込み中のマンションから容疑者が消えたことについて第3班の班長代理(石橋凌)の責任を追及する、ほとんど裁判のような場面が続き、張り込みが失敗した原因追及の疑心暗鬼の中で緊張感がじりじりと高まってゆく様を、榎戸耕史がじっくりと演出する。今回から撮影が安田圭に変わり、キャメラワークも、より被写体を舐めるように肉薄する。
■”密室”の意味の謎解きも実に冴えており、ゲーム的なミステリーではなく、人間ドラマとして秀逸だ。前作「囚人のジレンマ」では、刑事達の矜持に集約したが、本作では第3班班長伊武雅刀)の気味が悪いほどの(怪物的な)深い企みが、班長代理を精神的に追い詰めてゆく様をサスペンスとして描いている。事件そのものよりも、警察という閉鎖的組織内部の濃厚な人間関係の中に、組織内に生きる男たちが経験するであろう心理劇が念入りに織り込まれている。オッサンに訴求する所以だ。知る人ぞ知る小傑作だ。
■しかし、冒頭で石橋凌と一瞬の交流のあった小林恵のことが最後にはすっかり忘れられているのは残念だよ。


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