『震度0』

■テレビドラマ版を先に見たのだが、色々と気になる点があって、原作を読んでみた。結論、やっぱり原作小説のほうが重厚で、説得力があるわ。500頁弱あるので、2時間に詰め込むには、どうしても駆け足になってしまうわなあ。

■登場人物の背景と心理描写が十分に展開されるから、テレビドラマですんなりと納得できなかった部分が腑に落ちる。本部長と警務部長のキャリア同士の主導権争いなども、非常に納得しやすい。テレビドラマを見たときに、準キャリアの警備部長がキーマンだと感じたが、やはり小説ではテレビドラマ版よりも大きな役柄なのだった。ラストに警務課長の妻から告白を引き出すのは、警務部長ではなく、警備部長なのだ。ドラマ版では主演の上川隆也に集約してしまったのだが、そのために警務部長のキャラクターに無理が生じたと思う。この男は、もっと憎まれ役なのだ。

■終盤の風呂敷の畳み方も、原作のほうが秀逸だと思うよ。ドラマ版は主人公の警務部長に集約する形にしてしまったが、原作はあくまで県警組織が主役なのだ。そして、微かな希望を提示して終わる。感動的なのだ、その手際が。

■この小説、ミステリーではなく、「白い巨塔」に似ている。会社や役所のコンプライアンス関係の事例研究の題材に使えそうな小説なのだ。

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