横山秀夫サスペンス「深追い」 ★★★

深追い (新潮文庫)
■脚本・窪田信介、監督・榎戸耕史、出演・椎名桔平羽田美智子小野真弓寺田農余貴美子平泉成嶋田久作
横山秀夫の短編小説としては特に優れたものではない気がするが、水準作ではある。なにしろ、監督が榎戸耕史なので、安心して見ていられる。不必要にめそめそしない、ハードで抑制のきいた演出が、このシリーズの美点なのだ。
■深追いで犯人を死亡させたことを非難されて県警から所轄に左遷された警官が、これは煉獄での試練なのだと納得しようとするが、そうではなく、こここそが自分の生きる場所だと思い至るまでのお話。交通事故をきっかけに中高生時代の初恋の彼女と再会するが、未必の故意の殺人を疑い始めるというサスペンス。秘密の薫る未亡人役の羽田美智子を色っぽく撮るあたりが、榎戸耕史の演出の腕か。木造平屋の市営住宅のロケも非常にいい感じ。監察官の嶋田久作は、結局大した活躍はしないのだが、存在感は抜群。
■ただ、椎名桔平の警官はあまりにも職務怠慢だし、民間人を脅迫するし、それでも県警復帰が決まるというのは不自然だなあ。所轄での勤務ぶりは懲戒処分が相当では。

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