■日本に仕事に来たアメリカ人夫婦は深夜に若い女を轢くが、女は姿を消してしまう。それから、夫婦の撮る写真は奇怪な心霊写真となり、遂に夫は轢いた女との因縁を語り始める・・・SHUTTER
2008 ヴィスタサイズ 90分
DVD
■フジテレビのドラマや「パラサイト・イブ」「催眠」などの監督で有名な落合正幸がハリウッドデビューした本作、「心霊写真」というタイ映画のリメイクらしい。冒頭の富士の樹海での交通事故の場面から非常にうまくサスペンスが機能し、その後、夫の秘められた過去が明らかになってゆくというサスペンスを生かした展開も上々だし、さらにクライマックスには捻りもあり、奥菜恵が力演する幽霊表現も、アイディアのユニークさで際立っている。お話は、女幽霊の復讐という非常に古典的なもので、その意味では、かなりよくできた怪談映画である。
■恐怖表現としては意外にも大人めで、清水崇などと比べると、単純に怖くない。心霊写真の見せ方としても、それほど優れたものではないのだが、ポラロイド写真でその場を写せば、幽霊がいるかどうかを探せるというアイディアは、この映画の新発明だ。というか、オリジナルのタイ映画の功績か。おまけに、その結果、クライマックスで幽霊の思わぬ存在形態が明らかになる場面は、怖さというよりも、その珍なる有様に奇妙な感動を覚える。ほんとに、この映画のよくできた場面は、恐怖ではなく、奇想天外さに対する笑いを呼ぶことになるのだ。本作で、落合正幸は清水崇や中田秀夫の恐怖演出とは差別化を図ったのだろう。
■山本圭が心霊研究家で登場するがほんの一瞬、宮崎美子はかなり重要な役だが、役柄としては十分に描かれない。配役では奥菜恵が過酷な役柄を熱演して、この映画の文字通り中心となっている。醜く、恐ろしい女幽霊ではなく、美しく哀れな女幽霊像を意欲的に打ち出している点は評価できる。
■ちなみに、VFXは松本肇が担当している。柳島克己の撮影が上出来なのも嬉しい。