押井守と辻本貴則が深夜の密談?あの頃、ボクらは痛かった『花束みたいな恋をした』

基本情報

花束みたいな恋をした ★★★☆
2021 ヴィスタサイズ 124分 @アマプラ
脚本:坂元裕二 撮影:鎌苅洋一 照明:秋山恵二郎 美術:杉本亮 音楽:大友良英 監督:土井裕泰

感想

■2015年に偶然であったサブカル好きの大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)が勢いで同棲を始めるけど、当然ながら卒業すると生活が苦しいので働き始めると、麦は世間ずれして絹の思いとすれ違い始める。。。2020年の今から振り返る、若すぎた二人の痛いけどキラキラした同棲時代(遠い目)。。。

■という、非常にシンプルなストーリーラインの青春映画&恋愛映画で、誰も難病にならないし、主役も死なないという、いまどき珍しい真っ当な青春映画で、なんだかとてもすがすがしいし、心がヒリヒリ痛い映画。公開当時ヒットしたし、評価も高かったけど、確かに映画館で観たかったよなあ。後半のすれ違いの場面よりも、むしろ前半の二人のサブカルな結びつきの顛末がとにかく魅力的でキラキラしているので、そこだけずっとエンドレスで観ていたい気がする。もちろん『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』が下敷きになっているけど、むしろこっちのほうが良いなあ。

■二人を結びつける「神」が押井守で、本人が出演しているので大笑いだけど、その話し相手が辻本貴則というのも、なんとも珍味。それ誰が嬉しいの?そして、イアホンの左右を二人で聴いていると、右チャンネルと左チャンネルは別の音楽が入ってるんだぞと、突然説教を始めるめんどくさい親父(音楽職人?)が岡部たかしというのも傑作。しかも冒頭のトリッキーなエピソードにつながる重要場面だからね。おまけに、すれ違い始めた二人が出かけるはずが、絹しか行けなかった舞台が劇団ままごとの代表作『わたしの星』というのも実にマニアックで、要はそうしたサブカル要素のどこかが琴線に響くように作ってあるわけ。しかも、二人の関係が所詮は「ままごと」であることの隠喩になっている。でも、ままごとゆえに甘さや夢があるわけで、それは青春の記念碑なのだ。まあ、リア充じゃない方のサブカルオタクの皆さんには、縁のない世界。でも、それゆえに響く夢物語でもあって、そこが受けたのかも。

■今どきの同棲生活はお金はないはずなのに妙におしゃれで、これが70年代ならちゃぶ台が置いてあったりする安アパートだろうし、女優は濡れ場で堂々とおっぱいを出すだろう。このあたりは、ロートルの大物脚本家(誰?)などが待ってましたとばかりに突っ込むところだろうけど、まあ実際そこはもっと映画的には突っ込んでほしいところ。有村架純は好演だけどね。

■製作プロダクションはフィルムメイカーズ、リトルモアで、東宝系の製作体制かと思いきや、どうも違ったようだ。でも雰囲気的には東宝の青春映画の系譜に近いと感じたなあ。そこが妙味なのだ。



参考

映画に登場する『わたしの星』は、まさにこの舞台の再演時の様子を描写していたのだ!NHKで放映されたのは初演時の模様。
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土井監督はこれも悪くなかった。玄人筋のおじいさん世代にはいろいろ突っ込まれるけどね。
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こんな青春映画もありました。『恋は雨上がりのように』も良かったよなあ。続編ないけど。
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辻本貴則は最近ウルトラなどの特撮ドラマで大活躍です。ブレーザーはちょっと大人しかったけど。
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テレビドラマ『カルテット』は軽妙で良いですよ。かなり良い。
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