Mr.ディーズ　★★★☆

MR.DEEDS
2003 スコープサイズ 96分
DVD

　巨大企業のオーナーが急逝し、その持ち株を相続した片田舎のビザ屋の男（アダム・サンドラー）は、会社の実権掌握を狙う幹部たちの招きでNYへ。４００億ドルを相続した男をスクープしようとテレビ局の記者（ウィノナ・ライダー）が彼に接近する・・・

　フランク・キャプラの「オペラハット」のリメイクだが、オリジナルの理想主義や善意と素朴さへの崇拝は結果的に希薄となり、田舎と都会の対比というテーマ性は薄味となっている。

　監督のデニス・デューガンの手際はかなり怪しげで、神出鬼没のジョン・タトゥーロの演出などもっと綺麗に見せられるはずだが、と思いながら見ていると、ウィノナ・ライダーの正体暴露の場面の編集の端麗さに感心させられ、ラストのひねりの鮮やかさに唸らされるのだった。DVDを見ると、故郷の町での変人キャラの見せ場がもっとあったらしいのだが、９６分に収めるために、割愛し、おかげで気持ちいいテンポと切れ味がもたらされたわけだ。このアクロバット的なひねりのおかげで、「N.Y.式ハッピー・セラピー」よりも高得点を進呈せざるをえなくなった。

　ウィノナ・ライダーはやたらと目を剥く表情はやめたほうがいいと思うのだが、ここは監督がちゃんと演技指導すべきところをサボったのだろう。せっかくの正統派女優なのに、万引き女優のレッテルを貼られるのは、ハリウッドにとっても大きな痛手だと思うぞ。まあ、演技的に実力があることは間違いないのだから、息長く女優業を続けていれば、そのうちにいい映画に巡り会って大輪の花を咲かせるに違いないのだから、それまでに、私生活で破綻しないよう、手綱を引き締めるエージェントなり友人が必要なのだろう。

　一方、役得なのは足フェチの執事を演じるジョン・タトゥーロ。その実態は、見てのお楽しみ。ラストのひとひねりは痛快無類だ。

　アダム・サンドラーはいつものとおり愛すべき変人たちのキャラクターを物語世界に繋ぎとめる要としての立役ぶりを発揮して、嫌味の無い演じっぷり。大器というほか無い。