M:i:Ⅲ ★★★

M:i:Ⅲ
2006 スコープサイズ 126分
TOHOシネマズ二条(SC1)


 イーサン・ホーク(トム君)は現役引退して若い彼女とゴールイン寸前、教え子の若き女エージェントの救出作戦に復帰させられるが、作戦は失敗。バチカンに潜入してチームワークで捕らえた首謀者(フィリップ・シーモア・ホフマン)を責めあげるが、護送途中に奪還されてしまい・・・
 シリーズ3作目は、監督がなんども変更され、テレビ畑の監督が手堅く仕上げている。ピンチに継ぐピンチの見せ場の作り方とロケ撮影のボリューム感は圧倒的な迫力で迫るが、トムの恋人役のミシェル・モナハンが鼻が上向いた不細工な娘で、大きな減点材料になっているし、お色気担当のはずのマギー・Qも生かされておらず、ジャッキー・チェン仕込みのアクションの見せ場も用意されていないのは困ったことだ。
 敵役のフィリップ・シーモア・ホフマンの粘着質の演技が少ない出番ながら強烈な印象を残すのだが、ラストの上海での決着があれでは竜頭蛇尾という印象だ。ああ、勿体無い。
 危機また危機のシチュエーションを繰り出すことが優先で、結局のところ大した物語には到達しておらず、そのことがラストの呆気なさにも露呈している。
 しかし、そんなことはどうでもいいくらいに衝撃的なのは、トムの容貌の衰え方だ。この映画が異様な圧迫感で震えているのは、トムのアップがマイケル・ジャクソン的な崩壊感覚を隠そうとしていないためだ。いきなり冒頭から提示されるトムのアップの崩れた顔面は、特殊メイクというよりも、加齢の裂け目からトムの素顔が除いているように思えてしまうのだ。その印象は全編を通じて響き渡り、かつてのリアクション演技でのポカン顔は、顔面崩壊の緊張感に取って代わられている。トムはこのままマイケル・ジャクソン化してゆくのか、踏みとどまって渋い名優に変貌してゆくのか、この映画はその大きな分岐点に位置しているのではないか。

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