『大江山酒呑童子』

基本情報

大江山酒天童子
1960/CS
(2004/9/2 レンタルV)
原作/川口松太郎 脚本/八尋不二
撮影/今井ひろし 照明/中岡源権
美術/内藤 昭 音楽/斉藤一
特殊撮影/本多省三 特殊照明/伊藤貞一
監督/田中徳三

感想(旧HPより転載)

 藤原道長小沢栄太郎)は愛する渚の前(山本富士子)が妖怪に狙われていることを知り、源頼朝市川雷蔵)に払い下げ、都に災いをもたらす大江山酒天童子の征伐を命じる。大江山に金時(本郷功次郎)らを斥候に出すが、渡辺綱勝新太郎)の妹(中村玉緒)を拉致されてしまう。酒天童子長谷川一夫)は鬼ではなく、関白に妻渚の前を奪われた橘致忠が、関白の専横の打倒を誓って、野党の首領になったものだった。童子を守護する妖術使いたちの襲撃をかわし、童子の膝元に迫る頼朝たちだが・・・

 このときまだ新鋭だった田中徳三に任された大作時代劇で、実物大の土蜘蛛や黒牛の作り物が操演で描かれるが、ボリューム的には特撮大作という位置づけでもないようだ。

 酒天童子を権力打倒の反抗者として描いたところに新趣向があるのだが、肝心の雷蔵と長谷川の一騎打ちは本格的には描かれず、渚の前が最後まで最初の夫である童子を思いながら自刃したことを知って、世直しは頼朝に託して戦う意志を失うという展開は、やはり一般観客にとっては腰砕けだろう。脚本としては悪くは無いのだが、活劇としては不実といわざるをえない。

 山本富士子の演技もステロタイプな古い演技だし、雷蔵も大した見せ場がなく、妖術使いとの合戦のスペクタクルにも意を用いながら、結局は軟派な長谷川一夫に花を持たせた形になってるのという奇妙な作品だ。

 今ならCGでスケールアップもできるし、アクション映画としてのパワーアップも容易だろう。滝田洋二郎ならリメイクできるはずだぞ。

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