妖怪大戦争 ★★★

妖怪大戦争
2005 ヴィスタサイズ
ユナイテッドシネマ大津(SC6)

原案■水木しげる荒俣宏京極夏彦宮部みゆき
脚本■三池崇史沢村光彦、板倉剛彦
撮影■山本英夫 照明■木村匡博
美術■佐々木尚 音楽■遠藤浩二
CGIプロデューサー■坂美佐子 CGIディレクター■太田垣香織
監督■三池崇史

 麒麟送子に選ばれた少年(神木隆之介)は妖怪達のテストに合格し聖剣を手にするが、魔人加藤(豊川悦司)率いるヨモツモノ軍団が首都東京を占拠し、少年のスネコスリを醜い機怪に変身させてしまった。猩猩、河童、川姫たちとヨモツモノの本拠に突入するが、東京で大きな祭りがあると聞きつけた全国の妖怪達も集結してきて・・・

 日本一多忙な監督三池崇史が丸々1年をかけて取り組んだファミリー映画で、大映映画を吸収した角川映画の大作路線の成否を問うVFX作品。結果的には世界的に注目されながらマニアックな嗜好性を持っていた三池崇史が久々に王道の娯楽映画を撮ったという印象が残る映画になっている。もちろん、物語の組み立ての人を食った展開はいかにも三池崇史で、特にラストの呆気なさは賛否あるだろうが、少なくとも妖怪愛に満ちた物語世界を堅持したところはアッパレであった。

 なにしろ900カットもデジタル処理を施したという超大作なので、きめの粗いカットも多いのだが、あえてコマ撮りアニメ風に演出した機怪の見せ場も特殊メイクを主体とした妖怪たちとの対比がよく効いているし、まずは妖怪達のデザインと造形の秀逸さは特筆に値するだろう。妖怪造形の権威原口智生をあえて(?)起用しないことで、デザインと造形の微妙なリニューアルが可能となったのだ。妖怪キャラクターとしては、阿部サダヲ演じる河童が完璧な配役で、今後これを超えることは容易でないだろう。また高橋真唯演じる川姫はなぜか物語の要となる非常に重要な役割を担っており、人間には耳の痛い警句を要所要所に突きつけて、これが21世紀初頭の映画であることの意味を観客に問うている。

 ラストには妖怪大翁として水木しげるも登場して、子供に見せる映画として重みのある台詞で締めくくる趣向にも感心させられた。子供向け映画ではこうしたストレートな表現もアリなのだ。

 一方の機怪を操る加藤保徳の豊川悦司に悪の魅力が希薄で、ナルシズムしか感じられないのが痛いところだが、裏切り妖怪アギを演じる栗山千明の妖艶さは素晴らしく、特異なキャラクターをビジュアルと演技力で演じ切り、仇側の真の主役といえるだろう。

 皆さんのアイドル神木クンは頼りなげな風情で男の母性本能(?)まで刺激する媚がたまらんが、結局大した働きをしていないあたりは確信犯といえるだろう。お約束といえるスネコスリとの交流も涙を誘い、ひと夏の成長物語としての枠組みも抜かりが無い。子供向けの夏休み映画としては十分すぎる映画だが、実際のところ子供たちがどの程度妖怪に興味を示すのか、そこに読み違いが無いのかが気になるところだ。

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