感想
■実にシリーズ第11作目。なぜか舞台は現代の大阪ジャンジャン横丁になっている。福井から出てきた家出娘を売春組織から掻っ攫って田舎に戻す朝吉だが、一緒に連れ出して堅気に戻れと諭した女(八千草薫)が組に連れ戻されてしまう。しかもその組を仕切る親分は朝吉が片山津温泉で行きずりに一夜をともにしたあの気風のいい謎の女(藤村志保)だという。。。
■大ベテラン依田義賢のシンプルな話術を堪能できる良作。昔観たときはあまり感心しなかったけど、今観るとなかなか沁みます。八千草薫が下町の売春婦を軽妙にコミカルに演じているのが珍しい映画で、正直なところわざわざ八千草薫を充てるほどの役ではないのだが、贅沢感が味わえます。東宝ではこんな役は振ってくれないけど、ちゃんと芸域が広いわけです。
■一方の女親分を藤村志保が演じて、こちらのほうが役得がある。朝吉との絡みの場面も宮川一夫がいつものように決め決めの構図で攻めるし、照明が中岡源権なので、原色の照明でキャラクターに文字通り色付けをする。志保さんは緑がキーカラーですね。さすがにこのあたりの演出には力が入っていて濃厚に見せる。ただ、志保さんは顔を白く塗りすぎで、粉っぽい。案外地黒とも聞いたので、意識的に塗り過ぎているかも。
■ヤクザの事務所には藤岡琢也がいて勝新にコテコテにどつかれて良い小芝居を見せてくれるし、にやにやしながら観ちゃうよね。勝新は所謂立役で、田宮二郎のアドリブっぽい芝居が冴えるシリーズでもある。ホントにこのコンビ濃いよね。
■八千草薫と腐れ縁のポン引きの男が大抜擢の千波丈太郎だけど、東映ならもう少し大物を持ってくるよね。脇役が(たぶん予算的な制約で)東映のように揃わないのがこの時期の大映の弱点なわけです。