基本情報
Annabelle Comes Home ★★★☆
2019 スコープサイズ 106分 @Tジョイ京都
感想
■よい子のおともだち、あのアナベル人形が、より一層狂暴になって帰ってきたよ!
■脚本、監督がゲイリー・ドーベルマンなのでどうなることかと心配したのだが、意外や快作に仕上がっているから嬉しい誤算。でもダメなところもそのまま残っているから、あとで話すよ。
■1971年、ウォーレン夫妻が呪われたアナベル人形を回収して自宅の陳列室に収納するところまでがアヴァンタイトルで、ここまでの話術と演出がかなり見事なもので、映画1本観た満足感が味わえる。ここでもゲイリー・ドーベルマンの怪奇映画趣味が顕著で、夜の情景の地面のあたりにはいかにもドライアイス風の夜霧が漂っていたりするから嬉しい。ウォーレン邸で例の陳列室のガラスケースに収納するまでにひと悶着あって、ここもシンプルな音響演出が効果絶大。さらに、擬古的な粗っぽいローリングタイトルでメインタイトルがせり上がると、劇場で拍手が起こらないのが不思議なくらいの見事な決まり方。ここは素直に拍手でしょう!
■その後はウォーレン夫妻の娘ジュディの誕生会におともだちがきてくれるかなあという布石を振っておいて、父親を事故で亡くしたシッターの女の子がアナベルのケースを開けたことから起こる一夜の恐怖を妖怪大戦争風(?)ににぎやかに描く。正直なところ、アヴァンタイトルで飛ばし過ぎで、その後に陳列室の呪物たちの怪奇現象をどしどし描いたところで、どうしても一本調子に見えてしまう。そこがゲイリー・ドーベルマンのこれまでの脚本上でも明らかな弱点で、要するに、ドラマにサスペンスを盛り込むのが何故か下手なのだ。だから、中盤はかなり退屈。いろんな怪異が起こるのにだよ!
■それでも終盤にはとっておきの趣向を用意していて、それは玄人筋も唸らせるアイディアなので、ああ、今回はこれがやりたかったのねと素直に納得する。いかにも見事な怪奇趣味だし、シネフィルたらしだよね。あの冗長な『死霊館のシスター』も同様に最後だけはだれしも納得できる決着の付け方を用意していたので、ゲイリー・ドーベルマンは頭とおしりが呼応していれば映画の構成は大丈夫という哲学を持っているに違いない。だから中盤はサスペンスよりも、どしどしショックシーンとナイトウォークのシーンを詰め込んでおけという作風になる。だから同じような場面の連続になって冗長になる。違うと思うんだけどねえ。やっぱり基本はサスペンスでお話を駆動しないとだめですよ。
■そしてなんといっても本作の美点は『死霊館』本線ラインではないのに、ちゃんとウォーレン夫妻が登場することで、それだけで映画の格が上がるし、一気に説得力が増す。というか、ウォーレン夫妻のおのろけ話がないと『死霊館』じゃないからね。本作でも「俺にとって君はいつも”英雄”さ」とか「わたしも若い頃、彼氏と一緒に家を出たことがあるの。それが今の旦那よ」とか、どんだけ仲いいのかという「夫婦映画」なのだ。ああ満足。そして、お馴染みジョセフ・ビシャラの恐怖音楽も相変わらず工夫がいっぱいで音楽的に聴きごたえがあるし、60~70年代テイストのエンドタイトルも楽しくて素敵なので、ぜひ映画館で観よう!
予告編