Annabelle: Creation
2017 スコープサイズ 110分
MOVIX京都
■死霊館シリーズのスピンオフ作品で『アナベル 死霊館の人形』の前日譚。アメリカではすっかり死霊館ワールドが定着したようですな。前作はなかなか見どころのある作品でしたが、本作はどうでしょう。さすがに死霊館ワールドだけあって、ビッグバジェットな怪奇劇で、舞台となる大きな屋敷もセットだし、美術や装飾も贅沢で、撮影も美しい。まあ、撮影は少し美しすぎるので、もう少し荒んだ色調を加味してほしい気はするが。
■アナベル人形の誕生(製作)と呪われることになる由来を描き、1957年をメイン舞台として、人形師の屋敷に移ってきた孤児たちが悪魔に狙われることになる。時代色を濃厚に出すのがこのシリーズの美点で、楽曲の選択もとうぜんテーマに関わっている。本作のテーマは、愛するものを喪うこと。このテーマが過去と現在で重ね合わせられている点が脚本の上手い工夫。なので、死霊館本体では基本的に悪魔から家族は解放されて終わるが、本作は明確に悲劇である。そこも新しいチャレンジになっている。
■ただ、足の不自由なジャニスがあんなことになってしまうまでの時間配分が明らかに過剰で、似たようなナイトウォークの場面が頻発するため冗長になっている。監督の意図として怪奇映画的抒情を狙ったのはよくわかるし、美術や撮影がリッチなので見ごたえはあるのだが、明らかにもっと短くできるはずだ。全体にドラマが薄く見えてしまうのも、テンポが悪いためでもある。そもそも、ドラマがあるのは人形師夫婦の側であって、本来なら1945年の出来事を正面から描けばよかったはずだ。あんな事件があった家にわざわざ孤児たちを招じ入れる展開も相当無理がある。
■というように、あまり出来がいいとは思えない本作だが、誠実にまじめに作っているのはわかるし、最後に『死霊館の人形』に接続するとさすがに気持ちがいいので、終わりよければすべてよしで、良作といってもいい気になるよね。深夜の井戸に人形を捨てに行こうとする場面などもキャメラマンの腕の見せ所だが、実際、かなり良いルック。デジタル上映のおかげで(?)野面が少々明るすぎるのが残念だが、ああいういかにも怪奇映画的な設定の画を見せようとするところがこのシリーズの美点で、無条件に支持したい。
補足
■ブルーレイで再見したので、補足しておく。欠点はやはり脚本にある。主役が誰なのかはっきしりないままだし、クライマックスにツイスト(ひと捻り)が足りない。ラストシーンの『アナベル 死霊館の人形』とのリンクが気持ちいいのでついつい騙されてしまうのだが、ゲイリー・ドーベルマンの脚本に問題がある。
■おまけにサンドバーグ監督がマスターショット嫌いで、ハリウッド流の撮り方を避けている点にも難がある。ショット繋ぎのテンポよりも、長廻しによる情感を重視するため、映画のテンポが明らかに遅くなり、冗長になった。110分は明らかに長すぎる。
■マキシム・アレクサンドルの撮影は流麗で、どちらかといえば華麗なルックで、映画の主題に対して滑らかで綺麗すぎる。実際、夜の井戸にアナベル人形を捨てに行くナイトウォークの場面など見事なものだし、この映画の美点は撮影にあるのも確かなのだが、禍々しさは感じられない。もうじき封切りの『死霊館のシスター』でも撮影監督を担当しているが、綺麗さを超えた怪奇映画的抒情が誕生するのかどうか、非常に興味深い。