あの案件がまさかの映画化!闇が深すぎて眩暈がする力作『でっちあげ』

基本情報

でっちあげ ★★★☆
2025 スコープサイズ 129分 @イオンシネマ京都桂川
企画:和佐野健一 原作:福田ますみ 脚本:森ハヤシ 撮影:山本英夫 照明:小野晃 美術:坂本朗 音楽:遠藤浩二 監督:三池崇史


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感想

■アングラ社会の実録映画化では定評があり、独特のノウハウを持つ(?)東映が、あの原作をまさかの映画化。福岡で起きた教師による児童への「いじめ」事件。まさか映画化が可能とは思わなかったけど、正攻法で真正面から映画化しました。しかも監督は、いらん事をしがちな「思想なき過激派」三池崇史なのでどうなることかと思いきや、至って真っ当な演出で、力作になりました。

■なんで映画化が可能だったかと言えば、裁判劇にしたから。裁判記録に書かれていることなら、いまさら揉め事の心配は(ほぼ)ない。実際は、原告側になんらかのコンタクトをとったうえか、訴訟されても対抗できる理論武装をしているはず。この脚本なら対抗できるという判断のはずだ。

■作劇的にはシンプルな構成で、原告の主張、被告の主張があって、主人公の教師は教育委員会から6ヶ月間停職の懲戒処分をうけ、さらに児童の親から5800万円の損賠賠償訴訟を提起される。実際のはなし、ここまでの経緯だけで観ていて息が苦しくなるほどえげつないリアリティで、実際に教育現場や役所などでモンスターな人々に対応する地獄を経験した人は、トラウマが蘇ると思う。

■でも大丈夫。教師側が裁判で戦う決心をするから。後半は原告側の不都合な事実をあぶり出す展開に移行して、ちゃんとカタルシスが用意されている。

■配役も妙に豪華で、オールスターキャスト。高島兄はほんとに顔見せ程度。科学に不誠実な精神科医小澤征悦で、その弟子が美村里江。美村がさすがに良心が痛んで精神鑑定の現場の杜撰さを指摘するあたりもリアルで大変良いぞ。もちろん、現実に杜撰だったのだ!ああ怖い。問題の母親役は、柴咲コウを配役できた時点で勝ちは決まっていて、敢えて派手な演技をせず淡々と演じるだけで、存在の恐怖感がスクリーンに満ちる。ああいう人間がけっこうそこらに実在するということを知っておいて損はないですぞ。でもそう考えると怖くて、外出できなくなるけど!

■一方で少し残念なのは、事件で大きな問題を醸し出した、学校とか教育委員会の事実認定の杜撰さ、事なかれ主義の風土を十分に描けなかったことで、裁判劇としたことで、そこはほぼ背後事情に回ってしまうのだった。実際、何がどう検討されたのか、内部事情は独自に取材しないとわからないし、原作にも十分に書かれていない。でも、往年の橋本忍とかが書いていたら、絶対ここは外さないよね。官僚主義の弊害をリアルにえぐり出すはず。

■問題児童とその親の描き方は機微なところで、ほんとにデリケートな問題をはらむけど、基本的には裁判で記録された内容に限定して描いているようだ。ただ、いくつか回想が挿入され、それが取材の結果なのか、創作なのかは気になるところ。ちょっと甘いからだ。理不尽なモンスターは凡人の理解や論理を超えたところに存在するものだから、安易に共感させるのは、危ない、危ない。原作者は当然調査してかなりの事実を掴んでいるはずだけど、そこは敢えて書いていない。だって、彼らは今もどこかに暮らしているはずだからーー


参考

maricozy.hatenablog.jp
虚言癖の娘たち。ここでは幼い子供とか娘ですが、もちろん大人にもいます。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

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