アナベル 死霊館の人形 ★★★

Annabelle
2014 スコープサイズ 98分
DVD

アナベル 死霊館の人形 [Blu-ray]
■『アナベル 死霊人形の誕生』が楽しかったので、前作を再見した。やっぱり本作、不思議な愛嬌があって捨てがたい味がある。というか、かなり出来がいいと思う。

■ただし、脚本は弱くて、ドラマ部分が薄味、というか作劇が甘くて、サスペンスも弱い。テーマは、冒頭に神父の説教で語られ、ラストにも繰り返されるように、自己犠牲が最も尊い行いで、故に悪魔に対抗する最強の行いであるということ。ただし、これを実践するのは、エヴリンという黒人女性で、本作で最もドラマ性を背負った人物だが、その描き方が薄いので、クライマックスの自己犠牲の行動が唐突にしか見えない。実は娘を自分の過失で亡くしていて・・・という重要な背景がクライマックスの直前に明かされて、そのままクライマックスに突入する構成はまずい。もっと前の場面で振っておいて、お話の中に馴染んでから回収しないと、とってつけたように見えてしまう。例えばリー・ワネルの『インシディアス 序章』などは、非常に的確に作劇している。また、悪魔の仕業による怪異現象より、悪魔崇拝者による凶行の方が怖いというのも、ホントは失敗なんじゃないか。

■もともとキャメラマンのジョン・レオネッティが監督で、たぶん弟子が撮影監督を担当しているのだが、キャメラワークがかなりユニークで、その魅力が大きい。舞台となるアパートの狭さを生かすため広角レンズを基本として、スコープサイズの端に対象を配置した極端な画面レイアウトを多用する。隣家での悪魔崇拝者の凶行から自分の家にも恐怖が飛び火してくる様子をショック演出のつるべ打ちで描き出した場面は、このジャンルの映画の中でも突出した名シーンだろう。

ジョセフ・ビシャラのJホラーを研究しつくして、さらに独自の音楽性を盛った恐怖音楽も秀逸で、実に素晴らしい仕事。ただ、クライマックスがアパートの狭い部屋という舞台設定の負の側面が露呈したのか、映像的にもドラマ的にも盛り上がらないのは残念なことだ。ジョン・レオネッティとしてはここを感動的に盛り上げようという意図自体がなかったのかもしれない。勿体ないなあ。リー・ワネルならドラマ的な山場を作るだろうに。

■悪魔は誰の魂を狙っているのか、魂を奪うためには当人の承諾が必要らしいが、という物語のルールに沿って、クライマックスには捻りが用意されているのだが、ヒロインが『ローズマリーの赤ちゃん』のようには追い込まれないので、あまり効いていないんだなあ。でも、敢えてサスペンスを煽らず、淡々とショック演出を積み上げる演出が、なんだか気楽で楽しいんだなあ。悪魔人形を回収した神父が教会へ入ろうとする場面で、背後に口惜しそうに幽霊がついてくるカットなど、さらりと何気なく見せる巧まぬ演出が何故か面白い。

© 1998-2024 まり☆こうじ