富士山頂 ★★★

富士山頂
1970 ヴィスタサイズトリミング版 ?分
朝日放送録画
原作■新田次郎 脚本■国弘威雄
撮影■金宇満司 照明■椎葉昇
美術■横尾嘉良 音楽■黛敏郎、肥後一郎
監督■村野鉄太郎

■台風の接近をいち早くキャッチするため富士山頂に新型レーダーを設置するという気象庁の計画を受注した三菱電機の技術者たちの奮闘をドキュメンタルに描く、石原プロモーション製作の大作映画。

石原裕次郎の二十三回忌記念で地上波初放送され、やっと観ることができた。正直、原作小説を自分のリズム感で読み進めたほうが重厚で面白いのだが、映画は映画で悪くない。ドラマらしいドラマは無く、石原裕次郎の演技的な見せ場も無いという、とにかく雄大大自然に挑んで何かを成し遂げた男達が描きたいという欲求だけに基づいて製作されている映画だ。そこが、物足りないところであり、質素な魅力になっている。特に、クライマックスで、渡哲也がヘリコプターを操縦してレーダーをカバーするためのドームの骨組みを山頂に設置するスペクタクルは、豪快な空撮と黛敏郎の荘重な劇伴で、大いに盛り上がる。原作でも雄大な見せ場だが、映画で見ると、予想以上のスケールの空撮が抜群の説得力を見せる。ミニチュア特撮は一切無く、全て本物を撮影するという姿勢が痛快だ。ラストの、シネスコ画面の両脇にレーダードームと裕次郎を捉えたカットのカッコいいこと。見事なワンカットだ。

■役者としては、何故か勝新太郎佐藤允のコンビが目立ち、山崎努など見せ場が無い。業者間の談合を奨励するような発言をしたり、検査を待たずに電波を送出したり、富士山レーダー計画を達成するためにごり押しした気象庁の面々(芦田伸介宇野重吉)がラストでそろって左遷されるという結末は、原作とは若干ニュアンスの異なる結末で、感慨深い。本プロジェクトの真の功労者は、三菱電機の技術者であり、ヘリのパイロットであり、ブルドーザーを操る強力(ごうりき)といった現場で生きる男達であるというのが映画の主張であり、新田次郎本人がモデルとなった気象庁の技術官僚が主役であった小説との大きな違いである。

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