裕次郎、早苗を蹴飛ばしていいぞ!『紅の翼』

紅の翼 [DVD]

紅の翼 [DVD]

  • 発売日: 2005/07/08
  • メディア: DVD

基本情報

紅の翼 ★★★☆
1958年 スコープサイズ 93分 @アマプラ
企画:水の江滝子 原作:菊村到 脚本:中平康松尾昭典 撮影:山崎善弘 照明:藤林甲 美術:松山崇 音楽:佐藤勝、馬渡誠一 特殊撮影:日活特殊技術部 監督:中平康

感想

石原裕次郎中平康の初期コンビ作で、上出来の部類。何故か今までちゃんと観ていなかった。
破傷風で瀕死の男の子にセスナで八丈島までワクチンを届けようとするが、同乗した男が殺人犯で。。。というお馴染みのサスペンス作。ひとりの少年の命を救うために、大勢の大人たちが手を尽くすヒューマニズムだが、案外そこはサラッとしている。
■正直もっとこじんまりした犯罪スリラーかと思いきや、実は結構な大作仕様。クリスマスムードの羽田空港のセットも組むし、セスナは基本ミニチュアではなく空撮だし、米軍、自衛隊、海保まで巻き込んで遭難したセスナの探索に向かう。ただ、そのこのあたりはあまり劇的は回収されない。
■配役も豪華で、芦川いづみ裕次郎の妹だし、滝沢修清水将夫芦田伸介らの劇団民藝の面々、二谷英明小沢昭一も。しかし一番の問題はとくダネを狙って八丈島行きのセスナに無理やり同情する女記者役の中原早苗だ。まだ年齢的に後年の迷惑ヒステリーおばさんではないが、その片鱗はすでに胚胎しており、要所要所でキーキー言い出すので、裕次郎に蹴飛ばすぞと〆られる始末。本来ならこの役はキャリアガールで、迷惑ではあるものの、愛嬌のあるコメディエンヌ的な女優が適任なのだが、中原早苗では単に迷惑女史でしかない。当時はコケティッシュな愛嬌ある女優というイメージがまだ残っていたのだろうか。しかもこの女記者の父親が滝沢修というのも、何だかなあ。
裕次郎と新人峰品子が演じるCAとの軽い恋愛劇のエピソードは上出来で、私がデートをすっぽかしたから裕次郎がセスナに乗る羽目になって遭難してしまったとギャーギャー場違いに泣きわめく彼女に、日活の名花・芦川いづみが兄さんはそんな薄っぺらな人間じゃありません、思い上がらないでください!とピシャっと釘を刺す終盤の見せ場は最高。このあたりは中平康の演出も冴えている。芦川いづみの完全にブラコン気味の兄貴崇拝も、芦川いづみゆえに嫌味にならない。
■テーマソングはあまりに有名で、ついつい口ずさんでまう名曲。セスナの着陸場面の事故はミニチュア特撮も組み込まれるが、ごく短い一瞬のカットがいくつかある程度。そうそう、大型旅客機とニアミスする場面もあった。でも基本的には実物で撮り切る演出スタイルだ。
■ちなみに、中原早苗に個人的な恨みはありませんよ!演じた役の話ですから!
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