「黒部の太陽 ミフネと裕次郎」

黒部の太陽

黒部の太陽

  • 作者:熊井 啓
  • 発売日: 2005/02/19
  • メディア: 単行本
熊井啓が、今や幻の超大作と化してしまった「黒部の太陽」の成立の顛末を記録するために著した本だが、石原プロモーション三船プロの合作体制が五社協定、特に日活の堀社長の逆鱗に触れて空中分解の危機に瀕するあたりが興味深い。
■「黒部の太陽」のノーカット版は石原裕次郎の意向でビデオ化もDVD化もされていないのだが、ひょっとするとノーカット版はすでに存在しないのではないかという気がする。東宝のドル箱映画だった「キングコング対ゴジラ」ですら短縮版を作成する際にオリジナルネガを切ってしまい、正式に上映できるプリントは短縮版しか無くなってしまったのと同様の事態が生じているのではないか。石原プロモーションはそのことをひた隠しにしているのではないか。
■オリジナル脚本も収録されており、なかでも戦時中の黒三ダム建設の際に、高熱隧道と呼ばれた地獄のようなトンネル建設の様子を回想として盛り込んだのが熊井啓らしいところで、当然そこで虫けらのように酷使されたのは朝鮮人労働者たちであったことにも触れている。大ヒットした国民映画「黒部の太陽」の次に撮ったのが、長崎の原爆被爆者と被差別部落を扱った「地の群れ」であったことも、熊井啓の日本の戦後というテーマに対する問題意識の連続性を物語っている。しかも、その後で東宝配給の「忍ぶ川」を撮っているのだから、よほど映画関係者からは信頼されていたようだ。「黒部の太陽」の前から東京映画からは移籍を誘われていたそうだ。
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