お竜さん爆誕!緋牡丹シリーズ第一弾『緋牡丹博徒』

基本情報

緋牡丹博徒 ★★★
1968 スコープサイズ 98分 @DVD
企画:俊藤浩滋日下部五朗、佐藤雅夫 脚本:鈴木則文 撮影:古谷伸 照明:和多田弘 美術:雨森義允 音楽:渡辺岳夫 監督:山下耕作

感想

■明治の中頃、熊本の矢野組組長が何者かに辻斬りされる。娘の竜子(藤純子)は許嫁から婚約を取り消され、父の仇を求めて旅に出る。偶然出会った流れ者の片桐(高倉健)が手がかりの財布に見覚えがあるらしいが。。。

■緋牡丹シリーズ第一弾。今回初めて観ました。加藤泰の名作は何度か観てるけど、そもそもの発端を観ていなかった。生みの親は鈴木則文で、シリーズの立ち上げは山下耕作将軍だったのだ。公式見解によれば、藤純子は当時まだ23歳らしいけど、ホントですか?信じがたい貫禄。いったい何者なのか?

■結局お竜さんの父の仇は大阪の加倉組の大木実で、もともと会津藩士だったけど、明治維新で没落して辛酸を嘗め、高倉健の兄貴分に命を救われた過去を持つ。この大木実のエピソードがなかなか力が入っていて、高倉健は、あの時命を救うべきではなかったと後悔し、間違った時間をリセットしようとする。この因縁に脚本の力点がかかっているのは意外なほどで、やっぱり大木実に敗戦後の日本の姿を重ねているのかなあ。日本の敗戦後復興は間違っていたから、もう一度焼け跡からやり直すべきだという主張は、けっこういろんなところ(映画)に見え隠れする。(今度の『ゴジラ-1.0』もひょっとするとそんなモチーフかもしれない。)とすれば、健さんは間違った日本に最後の審判を届ける米国の立場になるんだけど。そういえば『ウルヴァリン SAMURAI』もそんなモチーフだったなあ。
maricozy.hatenablog.jp

山下耕作とえいば画面に花を入れたくて仕方ない人だけど、正直カッコ悪いよね。普通に撮ったほうがずっと良い。美術装置はまだ若干安手で、第二弾の方がずっと充実している。

■それにしても、藤純子の姿を映し出すだけで、画面に神々しさが滲み出すのは凄いことですね。照明効果もリアルさよりもスターを綺麗に撮ることを最優先にしていて、藤純子には最上級の配光がなされる。影はなく、ムラもない。化粧の粉っぽさもない。でも東映映画は全体に照明がフラットだから全く不自然ではない。昔よくあった女優特化型ソフトフォーカスの使用もない。被写体がその必要を認めないからだ。それでいて、この造形美。ただ神々しく光り輝く。今後到底ありえない手法だ。


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