菅原文太、東映初主演作!シリーズ第1作『現代やくざ 与太者の掟』

基本情報

現代やくざ 与太者の掟 ★★★
1969 スコープサイズ 92分 @DVD
企画:俊藤浩滋、矢部恒 脚本:村尾昭 撮影:星島一郎 照明:元持秀雄 美術:北川弘 音楽:菊池俊輔 監督:降旗康男

感想

菅原文太東映初主演作で、当時緋牡丹博徒シリーズで共演した藤純子若山富三郎が客演するというお祝儀企画。藤純子はホントに友情出演だけど、若山先生はかなり大きな扱いで、実に美味しい役を悠々と演じる。東映岡田茂としては、文太を売り出すのにかなり力を入れたという。

■チンピラ勝又(菅原文太)は出所後に荒尾組の福地(待田京介)と意気投合して兄弟盃を交わすが、手形のパクリ事件を巡って、勝又は荒尾組と激しく対立し、福地は板挟みとなる。。。

■「現代やくざ」と謳いながらもお話の内容や人物造形は義理と仁義に縛られた者とそうでない者の対立劇で、あまり新味はない。明らかに佐藤純弥の撮っていた映画のほうが、「現代やくざ」らしい。でも、登場人物たちがそれなりに魅力的だし、演技的にも充実しているので、見ごたえはあるし、なぜか若山先生がフランク永井の往年の名曲(?)「夜霧に消えたチャコ」を熱唱して、まるで日活ムードアクションのようだといいたいところだけど、じっさいはド演歌に聞こえるので、かなり珍妙な効果を発揮している。でも苦笑いを通り越して、結構面白いから、人間、勢いって重要ですね。

菅原文太もかなり演技に熱が入っているし、ラストの延々続く血みどろの死闘も降旗監督にしては大いに粘った演出で、やはりリキが入っている。それに、待田京介の叔父貴役の若山富三郎の演技の充実ぶりが目覚ましくて、すでに名優の貫禄がある。この頃、若山富三郎は極道シリーズの成功で自信と余裕を身につけたのだろう。以前の陰気で荒んだ、凄惨な凄みが、すっかり好人物に変じている。(実際は、楽屋の怖いおじさんで有名だったらしいけど)その映画的な安定感は、すっかり志村喬を超えている。

■文太と徒党を組むのが、山城新伍大辻司郎石橋蓮司小林稔侍、砂塚秀夫という面々で、さらにヒロインが田村奈巳というのが異色。でも、砂塚秀夫とか石橋蓮司はホントに出てるだけという感じで役不足。というか、贅沢な配役というべきか。同じことは田村奈巳にも言えるよね。でも、無駄に脱がされなくてよかったね。そうそう、牧師の格好でスリを働く胡散臭さ100%の髭面の大辻司郎はケッサク。これに比べると石橋蓮司の存在感の薄いこと。

■いまとなっては、「現代やくざ」シリーズは深作欣二の傑作が代表作みたいな印象だけど、深作版の「現代やくざ」が本当に現代やくざを描いていたのかどうかは怪しい気がする。むしろやくざ映画嫌い、任侠映画嫌いを公言する佐藤純弥やくざ映画のほうが、よほど先鋭的で、「現代やくざ」を描いていたということは、最近知ったところだ。


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