宝塚映画じゃないのだ!『猫と鰹節 ある詐話師の物語』

基本情報

猫と鰹節 ある詐話師の物語 ★★★
1961 スコープサイズ 106分 
原作:佐川桓彦 脚本:沢村勉、東善六 撮影:完倉泰一 照明:金子光男
美術:河東安英 音楽:黛敏郎 監督:堀川弘通

感想

池田勇人首相が所得倍増計画をぶち上げた時代、ひとさまの懐を狙い”詐話”でお金を巻き上げようとする大阪の詐欺師グループの活躍を軽妙に描く異色の喜劇映画。コンゲーム映画は後にいろいろと製作されるが、お話はそれほど洗練されていない。騙しの手口は面白いが、大阪が舞台ということもあり、浪速情緒が狙いだろう。森繁久彌が画面に向かって話しかけるスタイルも、森繁と草笛光子のいかにも古風な芝居がかった場面に歌舞伎の所作音楽のような音楽を充てて舞台調に撮るところも、諧謔味が本作の演出意図のようだ
■配役が少し変わっていて、詐話師グループの重要どころを千葉信男が演じるのだが、さすがによく知らないぞ。喜劇映画の脇役に当時よく出ていた役者らしいが、かなり大きな役で、前半でも大きな見せ場あるし、終始重要人物なので、本来ならもっと有名な役者を使う処だろうが、何か曰く因縁があったのだろうか。西村晃の起用はたぶん堀川監督の意向によるもので、そもそも西村晃東宝に最初に呼んできたのは堀川監督だったそうだ。(生前にご本人から伺いました。『黒い画集 あるサラリーマンの証言』が最初か)こうした個性派の脇役が好きだったそうなので、千葉信男の抜擢も監督の強い意向だったのかもしれないなあ。実際、強烈な印象を残す。ヌードスタジオに乱入するチンピラが小池朝雄だったりするのも堀川監督の起用だろうか。
■そして、てっきり宝塚映画の制作かと思っていたのだが、東宝本体の制作。う~ん、これは宝塚映画で撮るべきだよなあ。でも、森繁の住むアパートのあたりの美術セットの作りこみは凄くて、最初はロケかと思ったほど。汚い運河があり、画面に奥行きがあり、立体的に凝った空間配置の見ごたえたっぷりの贅沢なセットはさすがに東宝全盛期の余裕が感じられる。ただだだっ広いセットじゃなく、内容が詰まっている。
■正直、お話はあまり面白くはないし、演者が関東の人ばかりなのでせっかくの浪速風情も怪しいところがあるのだが、奇抜な趣向は捨てがたい。しかし、堀川弘通という監督はホントに掴みどころがないんだなあ。ハードボイルドの傑作『狙撃』もあれば、戦争映画の問題作『軍閥』もあれば、『学園祭の夜 甘い経験』という異色作(絶対観たい!)もありという守備範囲(?)の広さ。そしてクランクイン直前で中止になった『竜馬がゆく』、安部公房が脚本を書いた幻の特撮映画『第四間氷期』と、ますます混乱に拍車をかける謎の多い映画監督なのだ。