めぐりあい ★★★

めぐりあい
1968 スコープサイズ
BS2録画

脚本■山田信夫恩地日出夫 タイトルデザイン■和田 誠
撮影■田島文雄 照明■森 弘充
美術■本多好文 音楽■武満徹
監督■恩地日出夫


 川崎の自動車工場の組立工(黒沢年男)は小さな商店に勤める娘(酒井和歌子)とめぐりあうが、男は弟(黒沢博)の大学進学で対立して家出し、娘は母親(森光子)がバス事故で死亡して独立を余儀なくされる。待ち合わせですれ違った二人はの間には距離が生まれるが・・・

 荒木一郎の主題歌「めぐりあい」が絶妙な青春映画の小品。明るく楽しい東宝映画らしく、セックスを取り扱いながらも、あくまでオブラートに包んで提示される。ロケーションを多用して、60年代の団地や低所得層の民家がリアルに描き出されるあたりが、今観るとノスタルジーを誘う。

 黒沢年男の裸身に不思議な昂ぶりをおぼえる酒井和歌子の微妙な照明に照らされたアップショットなどなかなかがんばっているが、それ以上には踏み込めないのは、この時期のアイドル映画の限界でもあろう。

 青春スターとしての黒沢年男という存在も微妙なもので、後の岡田裕介ほどに時代を体現していないように感じられるのが哀しいところだ。むしろ「野獣都市」などの硬派なアクション映画が素直に似合っているのではないだろうか。

 酒井和歌子も内藤洋子の後を埋めるには幼すぎ、まだ子供にしか見えない。

 しかし、ふたりが再びめぐりあい、今度は以前よりもちょっと大人びた二人が街の雑踏の中に還元されるラストの爽やかさは、この映画の大きな美点となっている。

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