■2010年に放映された『世にも奇妙な物語20周年スペシャル秋~人気作家競演編~』で、宮部みゆきの傑作短編「燔祭」が映像化されたことはなんとなく知っていたけど、見逃していた。今回たまたま観ることができたので、備忘を残しておこう。
■実はこの「燔祭」という短編はすでに金子修介が2000年に映画化している。「燔祭」には長編「クロスファイア」という続編があり、これを金子修介が東宝で映画化する際に、「燔祭」のエピソードも取り込んだので、映画版の『クロスファイア』は「燔祭」と「クロスファイア」を原作としている。特に秀逸なのは、パイロキネシス能力を持ち、ひっそりと生きてきたヒロイン青木淳子が、はじめてその能力を証明して見せる場面で、これは「燔祭」でも出色の場面だし、劇的に大きな見せ場なので映画『クロスファイア』でもかなり丁寧に映像化されていて、中盤のクライマックスとなっていたし、映画の美点となっていた。
■それに比べると世にも奇妙な物語の『燔祭』は露骨に低予算で、そこは演出的にもあまり成功していない。一度映画化されているので、同じことはできないと考えたのかもしれない。まだ若かった矢田亜希子を金子修介が暗い影のある「宿命の女」として見事に造形したのに比べると広末涼子は配役自体に無理があるとも感じる。広末涼子、香川照之、中村倫也という配役は豪華だけどね。
■でも、クライマックスで降りしきる雨が人型に蒸気化する場面などは意外といい雰囲気で、原作の哀しげな余韻を反映している。その小さな成果は、映画版を超えているかもしれない。