彼奴を逃すな
1951 スタンダードサイズ
BS2録画
脚本■村田武雄、鈴木英夫
撮影■三浦光雄 照明■石川緑郎
美術■小川一男 音楽■芥川也寸志
監督■鈴木英夫
麻薬組織の殺人事件の犯人の1人を目撃した主人公(木村功)は、報復を恐れて警察(志村喬と土屋嘉男)にも隠すが、近所の知り合いが巻き添えで殺されたことから警察に真相を明かすが、警察の監視の目を掻い潜って、犯人(宮口精二)が主人公の店に現われる・・・
鈴木英夫特集の1本目だが、正直なところ、あまりよく出来たサスペンスではない。非常に小さな話をサスペンスで膨らませた脚本だが、サスペンスの演出が案外のっぺりしており、緊迫感を生み出すには至っていない。物語の内容からいえば、60分程度の中篇映画に収めるべきだろうと思われる。
むしろ、名手三浦光雄のモノクロ撮影の細密さと流麗な照明効果の見事さに打たれる。また、こんな小さな映画のために街の一角をオープンセットに組んでしまった邦画全盛期の贅沢さにも感動する。こうした基礎の上に、室内と室外の光の調子を巧く配分した美麗なモノクロ映像は成り立っているのだ。
木村功は当然巧いのだが、主人公の若妻の津島恵子がサスペンスに相応しい線の細い女らしさをよく表しているのに感心した。