ベンジャミン・バトン 数奇な人生 ★★★☆

The Curious Case of Benjamin Button
2008 スコープサイズ 165分
DVD

■老人として生まれ、新生児に若返って死んでいったひとりの男の数奇な人生が回想されるという相当奇抜なファンタジー映画だが、監督がデヴィッド・フィンチャーなので、ロマンティックなメロドラマにはなりませんよ。残念ながら。でも、2時間半の旅の終わりには、さすがにしみじみと人生観照に浸れるから良作であることは確か。

■基本的にブラピとケイト・ブランシェットのすれ違いメロドラマで泣かせる映画で、フィンチャーにしては珍しくアレクサンダー・デスプラにいかにもそれらしい流麗な音楽を書かせているし、CGも使い放題でスペクタクルな見せ場まである。でもブラピとケイトのメロドラマシーンも甘くならないし、『フォレスト・ガンプ』のように人の良い感じにはならない。

■若返ってゆく男と普通に年を重ねてゆく女がその軌跡において互いに時の流れを意識せざるをえない状況の中で、永遠はあるのかと自問する。時間を逆行する数奇な人生の果てに、永遠はあるよ、という結論にブラピはたどり着く。

■ブラピもケイトさんも大変な特殊メイクによって人間の一生を演じ切り、とにかく労作ということは間違いない。その労作であくまで非情な職人技を発揮するデヴィッド・フィンチャー師匠の味つけは、やはり甘くないのだった。

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