ゾディアック ★★★☆

Zodiac
2007 スコープサイズ 158分
DVD

■この映画は封切り時に劇場で観てるが、かなり体調が悪かったらしく、冒頭の殺人シーン以外ほとんどおぼえていなくて、とても窮屈で退屈な映画という印象だったのだが、改めて見直してみると、ちゃんとよくできた娯楽性になっている。なってはいるが、とにかくドライでタイトなのはフィンチャー映画ならでは。

■1時間半で事件のあらましをダイジェスト的に語り終えてからがこの映画の本領発揮で、ジェイク・ギレンホールが真犯人探しを始めるわけだが、このあたりは正統派のミステリー映画として面白いし、スリラー要素も入って、かなり見せる。ゾディアック事件に関わった人々の人生模様を謎解きと並行して見せるのも定石ながら上手くて、特にダウニー・JRの自堕落ぶりは冴えている。

■普通のハリウッド映画の監督ならもう少し人情に振るだろうが、フィンチャーは全くそんなそぶりもなく、ひたすら事件当時の正確な再現に執着する。それでもジェイク・ギレンホールはじめ関係者の人間味がちゃんと塗り込められていて、形式主義に落ち込まないのがフィンチャーの腕のよさ。

参考

封切りの際の劇場初見時の印象はこのとおり最悪だった。よほど体調が悪かったのだろうが、これほどの印象の変化も珍しい。「非情な頑固職人」というフィンチャーのイメージが腹にハマるかどうかだな。「窮屈」という印象はフィンチャーの職人性に起因する。
maricozy.hatenablog.jp

© 1998-2024 まり☆こうじ