あるスキャンダルの覚書 ★★★

NOTES ON A SCANDAL
2007 ヴィスタサイズ 92分
シネシャンテ


 ロンドンの労働者階級の子弟が通う中学校に美貌の女教師シーバ(ケイト・ブランシェット)が赴任してくる。孤独なベテラン女教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は彼女の美しさに惹かれて接近し、二人は親しくなってゆくが、シーバが教え子と密通していることを知ると、その秘密を彼女をよりいっそう支配するための切り札と考えるようになって・・・

 「めぐりあう時間たち」のリチャード・エアー演出による新作だが、物語自体は日活ロマンポルノの女教師もの、そのものである。しかも美貌の女教師がケイト・ブランシェットなのだから、もう何の文句も無い。性的に下品な言葉を投げかけられる場面など、ヒヤヒヤしながらも、ケイトの凛とした美しさが引き立つ。

 しかし、ところどころでフィリップ・グラスの音楽が謳い過ぎており、ギャグなのか?と疑うほどに場面と乖離しているところがある。物語は、イギリスで実際に起こったスキャンダル事件を素材としているが、初老の孤独なレズ女のストーカー物語という、サイコ・サスペンス風の構えをとっており、やや普遍性に欠けるし、類型的だ。特に、物語の終盤の作劇に失敗しており、せっかくのテーマ性に十分に落とし前を付けられていない。「めぐりあう時間たち」の成功は脚本に負う所が大きかったようだ。

 しかし、ケイト・ブランシェットのファンにとっては、一家で食後に変な踊りを踊る場面で、ケイトのスローな動きに、ジュディ・デンチがうっとりと見とれるところなど、彼女の美しさが実によく切り取られているし、トイレで小用を足す様子をアップで誤魔化さず、フルショットでさらりとリアルに描くあたりは、彼女の女優という仕事への取り組み方の美しさがよく表れていて、十分に納得の一本だ。なにしろ「ギフト」では下着姿で足を滑らせてずっこけるカットを自分で演じきった彼女なのだ。

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