ドラゴン・タトゥーの女 ★★★☆

The Girl with the Dragon Tattoo
2011 スコープサイズ 158分
DVD

■まあ、脚本をスティーブン・ザイリアンが書いているということもあり、2時間半の盛りだくさんの幕の内弁当のような娯楽作。40年前に行方不明となったスウェーデンの財閥一族のひとりの娘の行方を追うミステリーと、その陰惨な真相が主筋なのだが、探偵役のミカエルがパンク娘リスベットの助けを借りて失地回復を図るお話が同じバランスで進行する。お話の要素としては非常に欲張りで、実に立派な2時間半映画。

■とにかくデヴィッド・フィンチャーの頑固な職人芸を堪能する映画で、色々と残酷で凄惨な事件やえげつない描写が満載なのだが、それをスタイリッシュというよりも、製作サイドのレーティング対策を斟酌しながら巧みに編集で切り抜けるスレスレ感がスリリングだし、非常に安定感がある。特にリスベットの体験する虐待とあまりにやり過ぎな復讐劇のえげつなさをガチガチに堅牢なカットと編集で描き出すあたりはデヴィッド・フィンチャーの職人技の見せ所だ。

■結局、中年男ミカエルと小娘リスベットのメロドラマとして終結するわけだが、デヴィッド・フィンチャーはそうした場面も非情な撮り方で、あくまでクールである。デヴィッド・フィンチャーって、初期はお芸術方向に向かうのかと思わせたが、近年は職人監督として得難い豪腕を発揮しているようだ。しかも、非情なビックリ映画の職人として。本作も演技的に高レベルなのでジャンル映画感は希薄だが、しっかりとビックリ映画になっており、年寄りも唸らせる硬派な映画でもある。

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