キャロル ★★★

Carol
2016 ヴィスタサイズ 118分
ユナイテッドシネマ大津(SC1)

パトリシア・ハイスミスの原作ということで、ミステリーなのかと思いきや、純粋な恋愛映画だったので少し拍子抜け。50年代のNYを舞台にした女同士の恋愛映画。監督のトッド・ヘインズはどうも苦手で、本作も正直言ってそれほど良いとは思わない。でも、ケイト・ブランシェットの素晴らしさは特筆ものなので、それだけで十分満足。ウディ・アレンの映画のケイト様は全く場違いであったけれど、ここでのケイト様は水を得た魚、俺たちの見たかったケイト様がここにいる。

■とにかくケイト様の心が波立ち、心理は表情に表れずにいられないという感情の喫水線の高い状態の演技が抜群。ルーニー・マーラを誘惑する表情の繊細な心理表現を見ているだけで、そうそうこれがケイト様の真骨頂という納得が心の奥で腑に落ちる。こういう演技が最近無かったのだ。ほんとに最近の映画はろくなのがなかった。『ブルー・ジャスミン』を含む!

■それはラストシーンのラストカットにも繋がるのだが、ケイト様の心が動くその瞬間に映画のクライマックスが結び付けられている映画で、正直脚本的には弱いと思うが、それ以上の演技的な成果を手にしている。すべてがケイト様に捧げられた映画で、ケイト様のスター映画。だからドラマ的にはあまり感心もしないこの映画だけど、ケイト様にただただ酔う映画として、ひたすら正しい。

■ちなみに、デジタル上映なのに暗部に粒状性が出ているなあと思ったら、なんと16ミリ撮影らしい。所謂スーパー16ミリらしい。そうか、フィルムで撮れば当然粒状性もそのまま再現されるわけだ。

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