さらば、ベルリン ★★☆

THE GOOD GERMAN
2007 ヴィスタサイズ 108分
TOHOシネマズ六本木ヒルズ(SC3)

 1945年のベルリン、日本降伏の直前。ポツダム会談の取材のため、ベルリンにやって来たアメリカ人ジャーナリスト、ガイスマー(ジョージ・クルーニー)。彼は以前に人妻のレーナ(ケイト・ブランシェット)と不倫の関係にあったが、彼女は戦中戦後の動乱を生き抜くために売春婦に身を落とし、運転手のタリー(ジェイク・ギレンホール)の恋人となっていた。そんな矢先、タリーが謎の死を遂げる。事件に疑問を抱き真相究明に乗り出すガイスマーは、やがてアメリカの戦後戦略に絡む巨大な陰謀を探り当てるが・・・

 全編モノクロ撮影(あるいはポストプロダクションで脱色したのかも)で往年のハリウッド映画のフィルム・ノワールや「カサブランカ」などの戦争を素材としたメロドラマのタッチを再現してみせる力作なのだが、物語自体は、だからどうしたの?という感じで、小説を深い考え無しに要約してしまったようだ。明かされる謎自体が陳腐だし、語り口が特に巧いわけでもなく、サスペンスもあるようで無いし、ケイト・ブランシェットは売春婦という設定の汚れ役でありながら、外見が汚れ役を裏切っている。正直言って、これはミスキャストだろう。

 物語の謎の部分には、ナチスドイツに対する真剣でシリアスな認識が打ち出されており、特に人体実験で両足を失った何でも屋の主人など、よくリアルに描いたと感心する細部だが、ジョージ・クルーニーの収まりの悪さとケイト・ブランシェットの違和感で、どうも釈然としない映画なのだった。

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