エリザベス ゴールデン・エイジ ★★★

ELIZABETH THE GOLDEN AGE
2008 ヴィスタサイズ 114分
イオンシネマ久御山(SC4)

カトリックを奉ずる大国スペインに狙われるイングランド、エリザベス1世(ケイト・ブランシェット)はスコットランドの王女メアリー・スチュアートサマンサ・モートン)の存在にも警戒せざるをえない。両者が企んでプロテスタント一掃に動き出す頃、エリザベスは、航海士ウォルター・ローリー卿(クライヴ・オーウェン)を知り、その魅力に心動かされていた。自ら親しく付き合うことができない王女の地位ゆえに、侍女ベスに命じて、彼の身辺に接近させるが・・・

ケイト・ブランシェット出世作、前作「エリザベス」の続編で、イングランドエリザベス女王の指揮下でスペインの無敵艦隊を殲滅するまでの戦いの史実を、わかりやすく単純化して描き出し、ケイトのカリスマ性を増した演技力と存在感によって、異色を放とうとする大作。しかし、ハリウッドの超大作に比べれば、スケール感は控えめで、クライマックスの海戦シーンはミニチュアを使用しないCG主体のVFXの見せ場であるが、必要最小限に止められ、アクションよりもエリザベスの心理劇に焦点をあわせている。

■女王という地位に縛り付けられ、禁じられた恋愛や暗殺、国内外の策謀などに呻吟し、傷つきながらも女王としての役割に忠実であろうと努力する痛々しいひとりの女性像を、女流監督とケイトのコンビは追求する。しかし、ローリー卿との侍女を挟んだ恋愛劇にしても、作劇としては練りこみが不足気味で、女心が燃え上がってゆく心理劇に説得力がないし、その恋の顛末の作劇にしても中途半端だ。

■それでも2時間あまり前のめりで見入ってしまうのは、ケイト様のカリスマ演技のもの凄さゆえである。今回はジェフリー・ラッシュもすっかり老け込んで好々爺になってしまったので、ケイト様が妖しさを帯びた異形の存在感を独り占めである。ひとりの女が神々しさを身にまとうようになる姿を、彼女以上に演じ切ることのできる女優はいないだろう。ケイト様、カッコ良すぎです。

イオンシネマ久御山のスクリーンが少し暗いのかもしれないが、キャメラは暗さを追求した撮影設計となっているようだ。宮殿の中に閉じ込められ、王座に縛り付けられたエリザベスの境遇を象徴するように、広々とした構図を避けて、常に柱や壁に圧迫されたような画を狙ったキャメラが、この映画の演出意図を明確に示す。

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