県警対組織暴力 ★★★

県警対組織暴力
1975 スコープサイズ 100分
DVD
企画■日下部五朗 脚本■笠原和夫
撮影■赤塚滋 照明■中山治雄
美術■井川徳道 音楽■津島利章
監督■深作欣二

■本作は傑作と世評の高いバイオレンス映画なのだが、何度観ても正直ピンと来ない。笠原和夫の脚本なら「二百三高地」などほうが優れている。

■戦後の地方都市では、同級生が一方は警官、片方はやくざという現実があり、独特の癒着関係にあり、そこにエリート警官が赴任して暴力追放を提唱するところから、両者のバランスが崩れてゆくという構成は面白いのだが、たとえば山本薩夫のように、もっとリアルに描くべきだった。いつもの東映実録映画のタッチなので、どうもリアリティよりもケレンに傾いてしまうのだ。

■そのことは、倉島市(倉敷+玉島)という岡山県を思わせる舞台を設定しながら、台詞はいつもの広島弁という不徹底さにも現れている。広島弁の肉体感と文太の”旗”の台詞の抽象性が齟齬をきたしている。文太が松方に仮託するものが、どうもピンと来ないのだ。文太が松方の男を見込む場面はよくできてはいるのだが、文太は松方にどんな”旗”を幻視したのか。

笠原和夫の証言では、最後に文太を殺したのは天下りした梅宮という設定らしいが、そうであれば、もっと具体的に示唆しないと、単純に言って、面白くないじゃないか。山本薩夫の映画なら、そこまで見せるだろうに。

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