基本情報
柳生一族の陰謀
1978/スコープサイズ
(2001/9/29 祇園会館)
脚本/野上龍雄,松田寛夫,深作欣二
撮影/中島 徹 照明/北口光三郎
美術/井川徳道 音楽/津島利章
監督/深作欣二
感想(旧HPより転載)
二代目将軍の急死により三代目将軍の跡目を巡って忠長(西郷輝彦)一派と家光(松方弘樹)一派の間に権力闘争が激化、家光派にあって暗躍する柳生但馬守(萬屋錦之介)は自らの息子達を始め柳生一門を指揮し、奸計を操って忠長一派を辛くも一掃するが、その裏工作が露見することを怖れ、実働部隊として使役していた根来衆を殲滅する。彼らと寝食を共にして闘ってきた柳生十兵衛(千葉真一)の怒りは実父へと向かい、父親の野望の拠り所である家光の首が落ちることに!
今見ると東映京都の技術的な粗雑さが見え隠れし、往年の東映時代劇の持つスケール感も絢爛豪華さも全く引き継がれてはおらず、映像表現的には実際テレビ時代劇と大差ない。東映京都の技術レベルが復調してきたのは、やはり五社英雄が森田富士郎や西岡善信らの大映技術陣を導入したことによるところが大きいようだ。この規模の時代劇でも例えば森田富士郎のキャメラ、西岡善信の美術であれば、もっと時代劇の香り高い映像設計になっていたはずだ。実際の所、撮影も美術も相当スカスカである。よりによって宮島義勇を撮影監督に迎えた「赤穂城断絶」ではそのあたりが急激にレベルアップしていたが。
しかも深作欣二の演出たるや「バトル・ロワイアル」のほうがむしろ若々しくもあり、より緊密であると感じさせてしまう程度のお粗末さで、「里見八犬伝」のほうがあらゆる意味でよほど映画的であるとさえいえるであろう。
映画が深作らしい勢いを増すのは根来集落の殲滅以降になってからであり、千葉真一や志穂美悦子、真田広之らの活劇的活躍も点描程度というもったいなさも相まって、実に煮え切らない大味な時代劇となってしまった。
大原麗子演じる出雲の阿国と原田芳雄の笛吹きのエピソードなど案外良くできた恋愛劇だったのだが、このエピソードだけを独立して一本の映画にまとめた方が面白そうだぞ。
その他、成田三樹夫が代表作ともいえる武闘派の公家を演じて秀逸。芦田伸介、山田五十鈴、丹波哲郎、三船敏郎というキャスティングは無意味に豪華だが、何故か侘びしさが募るばかり。
物語終盤の粘り腰と、我々の世代だとさすがにこれだけは忘れるわけには行かないラストの記念碑的名シーン(?)「皆様方、お騒ぎめさるな。これは夢じゃ。夢でござる」と半狂乱で叫ぶ錦之介の姿に免じて星三つ半としておいた。これでは、時代劇の神様伊藤大輔が泣くというものだが。