『やくざの墓場 くちなしの花』

基本情報

やくざの墓場 くちなしの花
1976/CS
(2003/2/1 レンタルV)
脚本/笠原和夫
撮影/中島 徹 照明/増田悦章
美術/富田治郎 音楽/津島利章
監督/深作欣二

感想(旧HPより転載)

 暴力刑事(渡哲也)は射殺したチンピラの情婦との腐れ縁を精算するための金を求めて暴力団の賭場へと出入りするようになり、服役中の夫を待つ女(梶芽衣子)と知り合い、組の若頭(梅宮辰夫)と意気投合して義兄弟の杯を交わすことに。だが、覚醒剤にまで手を出して、どこまでも墜ちてゆく彼に対抗組織やこれと内通する警察も黙ってはいられないのだった。

 「仁義の墓場」に続く深作&渡のコンビ作だが、脚本家笠原和夫の知らぬ間に、何故か渡哲也のヒット曲「くちなしの花」がテーマ曲として抱き合わされて、脚本家の目論見からは大きく外れた映画に仕上がったようだ。実際、渡と梶のロマンスなんてまるで季節外れの日活ムードアクションといったところだ。

 朱と交わるうちに紅くなってゆくやくざ刑事の転落劇の面白さとしては中途半端で、ラストの渡のVサインも相当意味不明な演出で、かつての同僚(室田日出夫)にタバコでも求めているかのようにしか見えないという有り様だ。

 梶が日本人と朝鮮人のハーフで梅宮が「混じりっけなしの朝鮮人」という設定もほとんど有意義に機能しておらず、真っ向から突き詰められなかったのが残念だ。

 この映画の見所はむしろ曲者揃いの脇役達のパフォーマンスにあり、中でも警察の本部長を極めつけのリアリズムで演じた大島渚の異様な存在感はかえってリアリティのカケラも眼中にない他の役者達から浮き上がるほどだ。しかし、悪徳金融会社の社長を演じて渡に射殺される佐藤慶と警察幹部の成田三樹夫が警察学校同期でツーカーの仲というのは最高に素敵だ。

参考

映画版はそれなりの出来ですが、舞台が傑作なので、見る機会があれば是非。
maricozy.hatenablog.jp
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