宇宙からのメッセージ ★★★★

宇宙からのメッセージ
1978 スコープサイズ 105分 @DVD
原案■石森章太郎野田昌宏深作欣二松田寛夫 脚本■松田寛夫
撮影■中島徹 照明■若木得二
美術■三上陸男 音楽■森岡賢一郎
視覚効果■中野稔 特撮監督■矢島信男
監督■深作欣二

■ずいぶん久しぶりに見直してみると、予想外の面白さに感動してしまった。公開当時は、SFファンからはダサい、チャチだとバカにされ、東映映画ファンからは深作も終わったなと酷評され、興行的にも成功しなかった呪われた映画だが、30年後の今観ると、その映画的な面白さは格別のものがある。

■なんといっても、和製スペース・オペラを宇宙を舞台に里見八犬伝を演じるという風に解釈した着想は、絶賛に値する。そして、深作欣二矢島信男の映画職人としての技量の確かさと、とにかく活劇としての熱量の高さに、くらくらする感動を覚える。

■書きたいディテールはいくらもあるが、本作はなんといっても楽曲の魅力が絶大で、ガバナス帝国のテーマが鳴るだけで心躍る。エンドテーマも、テレビ版で毎週聞かされたせいもあり、条件反射的に胸が熱くなってしまう。これは文字通り、宇宙を舞台にしたオペラなのだ。

特撮研究所東映京都で撮ったミニチュアワークがとにかくカッコいい。巨大なミニチュアの存在感も素晴らしいが、宇宙空間でのドッグ・ファイトを操演で描ききった技術は、今見ても息を呑む。エフェクトアニメ合成はデン・フィルム・エフェクトなので、当時としてはかなり頑張っている。本来ならもっと丁寧な合成が身上なのだが、突貫撮影のため、時間がとれなかったのだろう。東通ECGシステムのビデオ合成は残念な結果だが、実験的価値はあったと認めよう。特撮カットと本編の手持ちキャメラのカットの編集が、これまた絶品で、楽曲もあいまって、非常にカッコいいのだ。

■今回気づいたのは、ベバ2号の健気な活躍ぶりで、曽我町子が見事にキャラクターを吹き込む。リアベの実が彼のもとに現れる場面は、泣かされた。

■ガバナス帝国に誇りをかけて最後まで抵抗を続けたため、却って惑星ジルーシアを死の星にしてしまったという状況設定と、それに対する佐藤允のアンチテーゼが対峙されるクライマックスの作劇も見事と思う。惑星ジルーシアの姿に深作は、アメリカに降伏せず徹底抗戦を続けた架空の日本の姿を投影しているだろう。崩壊する惑星ジルーシアと運命を共にする織本順吉の姿と最期のメッセージに今回はじめて感動したが、なんだか日本沈没の田所博士のようにも見えた。実際、小松左京の「さよならジュピター」との類似も少なくなく、両作とも宇宙を舞台にしながら太平洋戦争の記憶を総括しようとしているのだ。

■本来、地球など出てくる必要が無いのに、三谷昇の老婆をかまして無理やりのように地球の美しさが強調されるのも作劇的にはかなり強引で、でも、だからこそ、そこに深作欣二の思惑があったのだろう。何故なら、地球で生まれ育った女が流れ流れて冥王星で怪物を産み落とし、地球への望郷の念を抱きながら死ぬシーンが異様な感動をもたらすからだ。この地球への郷愁の念はこの映画の通奏低音となって、ラストの宇宙帆船が地球を目前に反転する感動的な場面と響きあっているのは確実だ。

■ちなみに、佐藤允の役は室田日出男、岡部正純の役は川谷拓三が当初のイメージだったらしい。なるほど、激しく納得。

© 1998-2024 まり☆こうじ