あゝ決戦航空隊 ★★★

あゝ決戦航空隊
1974 スコープサイズ
レンタルDVD

原作■草柳大蔵 脚本■笠原和夫野上龍雄
撮影■塚越堅二 照明■増田悦章
美術■井川徳道 音楽■木下忠司
特撮撮影■国定玖仁男 特撮照明■井上孝二 特撮美術■竹川輝夫
特撮助監督■牧口雄二 操演効果■鈴木昶 特撮監督■本田達男
監督■山下耕作


あゝ決戦航空隊 [DVD] 特攻作戦の創始者といわれる大西瀧治郎中将(鶴田浩二)を主人公とし、終戦に反対して徹底抗戦を叫んだ厚木航空隊の小園司令(菅原文太)を副主人公としながら、太平洋戦争の戦局を概観した戦記大作。安藤昇の名前の隣に西城秀樹が並ぶ混沌がいかにも東映らしい豪胆さだ。

 「日本沈没」に対抗した企画というだけあって、上映時間は190分を超える超大作だが、当時の東映の制作体制の貧弱さが露呈しているのは寂しい。これに比べれば「二百三高地」「大日本帝国」のあたりは相当贅沢な映画である。

 「日本沈没」の中野特撮に対抗するのが、特撮研究所矢島信男ではなく、東映京都撮影所の手先の器用な混成スタッフというのもトホホだが、操演には東宝出身の鈴木昶が参加しており、特撮シーンは案外良くできている。ゼロ戦とB29の空中戦など、後の川北紘一の「大空のサムライ」「零戦燃ゆ」を先取りする演出があり、ラジコン機の使用も川北特撮に先駆けているあたりは、注目に値する。もっとも、大半の戦闘場面は記録フィルムであり、特撮場面を娯楽としてじっくりと見せようとする意図は希薄だ。

 一方、日本を本気にさせるためには特攻まで踏み込む必要があったのだと独白し、閣僚、重臣をはじめ大元帥である天皇まで特攻して初めて終戦が迎えられるのだと述べ、生き残った国民よりも死んでいった者たちの立場から終戦工作に反対する大西中将の姿には、笠原イズムが全開で、小園司令も天皇「あなたは過ちを犯されましたぞ」と狂ったように絶叫するラストは、あまりのストレートさに唖然とするほどだ。

 死者の立場から日本民族を憂う大西と現実的に生き延びた日本人の今後を考える米内(池部良)の対立が映画後半のテーマとなっており、もはや正気とは思えないほどに極端な観念論に傾いてゆく大西の言動にどの程度普遍性が感じられるかが、この映画の評価に繋がるのだろう。「大日本帝国」の笠原和夫は既にここでも揺るぎない視点を確立していたのだ。

 日本の国土と日本民族の行く末を憂うという意味において、この映画は確かに日本沈没」に対する東映流の返歌になっている。


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