『長崎ぶらぶら節』

基本情報

長崎ぶらぶら節
2000/ビスタサイズ
(2001/8/11 レンタルV)
原作/なかにし礼 脚本/市川森一
撮影/鈴木達夫 照明/安藤清人
美術/西岡善信 音楽/大島ミチル
特撮監督/佛田洋 特殊撮影/高橋政千,中根伸治 照明/安藤和也
操演・特殊効果/鈴木昶 美術/松浦 芳
デジタルエフェクト/尾上克郎
オムニバスジャパン VFXスーパーバイザー/石井教雄
東映デジタルフィルム、東映化学デジタルテック
監督/深町幸男

感想(旧HPより転載)

 長崎の芸者愛八(吉永小百合)は軍縮条約の履行のため沈められる新造戦艦土佐を悼んで即興の唄を献じたことから、家業を畳んで土地の古い唄を収集して歩く男古賀(渡哲也)と知り合い、その旅の中で男に惹かれてゆくが、妻(いしだあゆみ)もある男との親密な付き合いは噂を呼び、別れざるを得ない。西条八十岸部一徳)と知り合ったことから二人の発掘した長崎ぶらぶら節がレコード化されてヒットし、愛八が我が子のように慈しんだ娘のお披露目の席に呼ばれる。そこには古賀が待っていたのだが。

 どう考えてもヒットするとは思えない企画だったが、劇場はともかく、ビデオでは案外貸出中になっているから主演二人の潜在的なファンは決して侮れないのかもしれない。

 市川森一の脚本らしく、愛八が螢の群に抱かれる幻想的なシーンが織り込まれ、特撮研究所オムニバスジャパンによるSFXもふんだんに活用されている。他にも新造戦艦土佐関係のデジタル合成が物語上重要な役割を果たしているのでわざわざ特撮監督を立てたものと思われる。

 ただ、蛍のシーンが意味するものは判然としないし、往年のTVドラマで見せた卓抜のストーリーテリングや豊かなイマジネーションは片鱗も見あたらないのは、やむをえないことだろう。市川森一には全盛期に映画の脚本を書いて欲しかったと常々思う。 

 美術は西岡善信以下映像京都のスタッフが仕切っており、規模は大きくないのだがポイントを絞り込んだ石畳の橋の袂のセットの質感はさすがに贅沢なつくりだ。

 近年すっかり東映京都御用達といった風情の大島ミチルの劇伴も相変わらず流麗で、予算規模以上に映画の格を押し上げていることは明らかだ。

 正直言って、今回の吉永小百合の演技は誉められないのだが、原田知世高島礼子藤村志保といった女優の共演だけで結構嬉しいし、特に優れたものでもないが深町幸男の演出も奇を衒ったところがなく、案外安心してじっくり観られる映画には仕上がっている。

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