子どもたちよ、これが現実だ!残酷トレンディドラマ、ついに大団円!そして伝説へ…『鳥人戦隊ジェットマン』第10巻:備忘録

■第48話から第51話までを収録する最終巻。シリーズ、ついに怒涛の完結。

第49話「マリア…その愛と死」(脚本:井上敏樹、監督:蓑輪雅夫)で、ついに竜とリエ(マリア)のドラマが完結する。血で汚れてしまった自分はもう竜のもとへは戻れない。私のことは忘れて。。。でも最期にグレイには、本当は竜とやりなおしたかったと本心を言い残して事切れる。

■この場面、グレイが「マリア」と呼びかけるたった一言に万感の思い(慈愛?)がこもって、すごい迫真の演技なので鳥肌が立ったけど、声優はスーツアクター日下秀昭が演じているのだった。日下秀昭は巨大ロボを演じ続けて人間国宝級と佛田洋も絶賛する人だけど、守備範囲が広いのだ。なんだか全てが良い方に偶然を呼び込んで、偶発的に凄い演技と録音を成立させていると思う。連続ドラマの生み出す勢いの力は侮れない。

■結局、なんの罪もないリエはついに人間に戻ることもできず、バイラムの幹部という血塗られた誇りを胸に、でも本心は人間のリエとして死んでゆく。そこに安易な救いはない。なぜなら現実とはそんなものだからだ。グレイだけがその全てを知っていればいい。それだけが救いかもしれない。。。

■でも、第50話「それぞれの死闘」(脚本:井上敏樹、監督:雨宮慶太では、ついに誇り高きロボ戦士グレイが絶命する。最期までマリアを慕いながら、ロボットの身体に無いはずの魂が故郷に帰ってゆくさまを表現した雨宮慶太の演出が秀逸。哀しすぎて…辛い。

最終話「はばたけ!鳥人よ」(脚本:井上敏樹、監督:雨宮慶太も噂通りの問題作で、Aパートでついに裏次元外道伯爵ラディゲが死ぬ。血を吐きながら身体は死んでも裏次元から呪い続けると言い残して。このあたりの表現は、以前から市川森一に似ている感じてきたのだが、まるでウルトラマンAの「ベロクロンの復讐」じゃないか。「勝った者は生き残り、負けたものは地獄へおちる。しかし、これだけは覚えておくがいい。勝った者は、常に負けた者たちの恨みと怨念を背負って生き続けているのだ。それが戦って生き残っていく者のさだめだ!」(子ども番組のセリフじゃないよこれ。市川森一、いい意味で、大人げないぞ!でも、この本気度こそがまさに教育なんだよ!)

■そしてBパートで思わぬ形でドラマを完結させる。これはもう書いた井上敏樹も凄いし、雨宮慶太の演出も立派としか言いようがない。一言で言って、感無量です。実に30年以上前の戦隊もので、当時戦隊からは離れていたので観ていなかったけど、大げさでなく生きているうちに観られてよかったと感じる。ジェットマンを観ずして、特撮を語るなかれ」ですね。

■いきなり外様監督として起用されて、しかも途中で自分の映画『ゼイラム』のためにいったん抜けて戻ってきて、それでも思い通りに撮りあげた雨宮慶太の胆力にも驚嘆した。自分で撮る特撮シーンのこだわりはさすがに東映出身の監督にはできないことで、円谷プロでは特撮監督も経験した東條昭平だって他の東映監督と同じ段取りしかやってないからね。ちなみに、東條監督は最終回でアコのマネージャー役として登場しますよ!

■こうして『鳥人戦隊ジェットマン』は伝説となりました。もの凄いコラボレーションを見せてもらったことに、本作品に関わった全ての人々にありがとうの言葉を贈りたいと思います。【完】

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