基本情報
極道の妻たち・死んで貰います
1999/ビスタサイズ
(2001/8/6 レンタルV)
原作/家田荘子 脚本/高田宏治
撮影/水巻祐介 照明/沢田敏夫
美術/吉田 孝 音楽/大島ミチル
監督/関本郁夫
感想(旧HPより転載)
組長亡きあと次期組長に決定した幹部(原田大二郎)とその妻(斉藤慶子)と獄中にある敗れたその兄貴分(佐川満男)の妻(高島礼子)との関係が悪化し、一触即発の状態になったとき、高島に拾われたバーの雇われママで原田の愛人でもある流れ者の女(東ちづる)は両者の鍔迫り合いの背後に身を潜めた悪党の存在を嗅ぎつけていた。だが、彼女は原田を護ってヒットマンの銃弾に倒れる。残された二人の極妻には共通の敵の存在が徐々に浮かび上がってくるのだった。
前作とは打って変わってほとんどのシーンがフィックスを中心としたカット割りで、「昭和残侠伝」等のスタイルを意識的に踏襲したものと思われる。
そう、クライマックスは大文字の送り火をバックに二人の極妻が長山洋子の演歌をバックに悪党の事務所に殴り込みをかけるという、往年の東映映画の演出を今時パロディではなく真っ正面から援用するという大王道のアクション映画で、高島礼子が鴨川の支流に亡き夫の名を記したお札を流すと、上流からも同様のお札が流れ着き、斉藤慶子が姿を現すクライマックスの手際の鮮やかさ、そして突如高鳴るド演歌の調べに、まさに不意打ちの感動を強要される驚きのVシネマだ。
高島礼子自身も決して巧いとはいえないし、斉藤慶子と東ちづるにしてもキャリア不足は明白だが、今になって突然生気を取り戻して、2人の極妻の生き方を、極妻に反感を持つ出自に訳ありの女の死に様から照射した高田宏治の手堅い脚本に、幾つ引き出しがあるのかと驚きを隠せない関本郁夫のオーソドックスな東映スタイルの演出が有無を言わせず映画の地力を引きだしてゆく。
今回特に力がこもっているのは流れ者といいながら実は生粋の京都人らしい東ちづるの役柄で、そのことを際だたせるのが通称ゼロ番地と呼ばれ、京都の鴨川べり、崇仁地区に戦後生まれた実在したスラム街でのロケーションが敢行されていることだろう。この大胆さは京都人でなければ実感することはできないかもしれないが、画期的なことである。また、鴨川べりに木製の階段を設置したロケーション撮影がなかなか秀逸で、数々の時代劇で描かれた川縁の記憶を想起させる舞台装置の設定も実に素晴らしい。
【映画豆知識】(2023/9/17追記)
ちなみに、崇仁地区ゼロ番地での異例のロケーションが可能になったのは、関本監督が『残侠』で会津小鉄会を描き、当時の組長に気に入られていたからだそう。
東映ならではの、いい話(?)ですね。
でも、『残侠』は諸般の事情(なんとなく察しはつくけど!)で現在観ることができません。封切り当時から、なんで今どきこんな映画が出てくるの?東映何考えてるの?と違和感しかなかったけど、こんな話聞くと是非観たいなあ。
ただ、原田大二郎や三田村邦彦らのキャスティングの弱さはもう少し改善の余地があるだろう。原田大二郎の仕事としては、間違いなく近年の代表作ではあるのだが、前作の野川由美子レベルの芸達者を揃えないと、やはり配役にすきま風が吹く。