橋のない川 第ニ部  ★★☆

橋のない川 第ニ部
1970 スコープサイズ 140分
衛星劇場
原作■住井すゑ 脚本■佐治乾
撮影■中尾駿一郎 照明■浅見良二
美術■川島泰造 音楽■間宮芳生
監督■今井正

■本来三部作として構想されていたものが、部落解放同盟からの糾弾や上映阻止運動を受けて、本作で完結させることにしたらしい。終盤は、これまで無かったナレーター(出た、鈴木瑞穂!)が登場するなどして、お約束どおり水平社宣言を原田大二郎が読み上げて終わるという、かなりのやっつけ仕事だ。だいたい、原田大二郎が穢多寺出身の社会運動家として登場するだけで、映画の説得力が瓦解する。

■第二部は米騒動をクライマックスに構成されており、北林谷栄の存在感が後退して、伊藤雄之助が大活躍する。いつの間にか米騒動の先導者になってゆくあたりの可笑しさ。その後には、米騒動の仕返しだと叫びながらヤクザたちが小森部落を破壊するという顛末があり、伊藤雄之助は警察に逮捕されるが、その後のエピソードはナレーションでオミットされ、水平社設立大会に向かう人々の姿で映画は唐突に終わってしまう。明らかに終盤部分が崩壊している。せっかく丹念に積み上げてきた地に足の着いた人間の生活感が、水平社宣言という伝家の宝刀で一気にイデオロギー的なものにすりかわってしまった。水平社宣言自体というよりも、その映画的な描き方の問題だ。

■しかし、本作で描かれる小森部落は、映画で観る限り、当時普通にあったはずの貧しい山村の姿とあまり変わらないのではないかという気がする。小規模小作農や家内制手工業的な草鞋や製靴といった部落産業を営む小森部落の姿は、都市部落のそれとは趣を異にするだろう。本作はひとつの被差別部落年代記であると同時に、日本の貧しい小集落に普遍的にみられたであろう人間の喜怒哀楽や人間関係の結びつきの緊密さといったものを伝えているのかもしれない。


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