70年代韓国歌謡にメロメロのあまちゃん活劇『密輸1970』

基本情報

Smugglers ★★★
2023 スコープサイズ 129分 @インシネマ京都桂川(SC3)

www.youtube.com

感想

■1970年から1973年ころ、韓国の地方漁村では、化学工場の公害でアワビが全滅、窮余の一策で密輸に手を染めたことから、密輸王、チンピラ、税関などが入り乱れる密輸利権合戦が展開する。というお話だけど、海女の二人の友情物語と復讐活劇になっていて、それをタランティーノっぽいタッチで描く。さらに、音楽は当時のソウルフルな韓国歌謡曲を全面的にフィーチャーした。そこが斬新。もちろん、一度も聞いたことのない楽曲ばかりなのに、妙に懐かしい気がするのは、韓国でも日本と同様の70年代テイストのメロディとアレンジが流行していたから。

■海女二人の確執と友情は、まるで東映のピンキーバイオレンスのようで、定番の燃える展開。でも、お色気はなしよ。キム・ヘスもヨム・ジョンアもいいお歳なので。(ちょっと残念)そのかわり、活劇要素は抜かりがなくて、なにしろ監督がリュ・スンワンなので、外すはずがない。特にクライマックスの海中アクションは、なにしろ動きが鈍いので、かなり難しいシチュエーションだけど、さすがにテキパキと編集で見せるし、カタルシスも大きい。

■予想以上にVFXが大量に使用されていて、海上シーンでは見るからにデジタル合成っぽいルックが散見される。まあ、仕方ないよね。全部ロケでは撮りきれない。当然ながら、サメちゃんも登場するよ。そうそうタコも大活躍だ。

■時制をいじった展開などはあまり成功せず、中盤はちょっと求心力を欠くと思う。その原因となったのが密輸王のチョ・インソンに時間をかけたため。ここはもっと削ってしまった方が、テンポが良くなるはず。あまちゃん二人の友情が、姉妹という感じではなく、ちょっと同性愛的に描かれる仄めかしの部分が感動的で、監督としてはそのつもりで演出しているだろう。当時の流行歌チェ・ホンの「ゆすら梅」(だそうです)で呼び合う場面など、まさにそんな感じ。(邪推かなあ)

■リュ・スンワンの映画としては、『モガディシュ 脱出までの14日間」』とか『生き残るための3つの取引』のほうが上出来だけど、なにしろ韓国70年代歌謡の破壊力にやられる。エンディングでもフルに流れる、パク・キョンヒの「身を寄せるところはどこかわからないけれど」(だそうです)も、傑作。映画館の大音響で聴くと、特に痺れる(韓国語はわからないけれど)。ぜひともサントラが欲しい!
news.yahoo.co.jp


© 1998-2024 まり☆こうじ