まさか！沼田曜一が大学教授？『海女の化物屋敷』

海女の化物屋敷 [DVD]

基本情報

海女の化物屋敷　★☆
1959　スコープサイズ　81分　
原作：葭原幸造　脚本：杉本彰 、赤司直　撮影：岡戸嘉外　照明：関川次郎　美術：宇寿山武夫　音楽：長瀬貞夫　監督：曲谷守平

感想

■曲谷守平という監督があまり上手くない人だということがはっきりわかる怪奇スリラーの一作。海女部落の名家だった青山家は呪われていてほぼ死に絶えたが、屋敷に幽霊が出るから助けてくれと令嬢に言われてやって来たヒロインは東京の刑事の恋人で、刑事が追う黒真珠殺人事件と関連があるとにらむ。部落に逗留して海藻の研究をする大学教授が怪しいと睨むが、、、
■ちゃんと不気味な亡霊が登場して、何度か強烈なショックシーンでビックリさせてくれるので、決して嫌な気はしませんが、とにかく脚本が弱いので如何ともし難いですね。大方の想像通り青山家の隠し財産をめぐる犯罪ドラマに収束し、どう見ても大学教授には見えない沼田曜一が正体を現して哄笑しますよ。終盤の沼田曜一の大活躍は、ファンにとっては嬉しいところで、怪奇ムード溢れる見事な死に様まで期待通りの見せ場を演じてくれます。ただ、曲谷監督がそのあたりの塩梅が十分に分かっていないようで、せっかくの道具立ても十分に生きませんね。
■一方、向こう気が強い海女の万里昌代は好演で、グラマー女優と言われる所以がよく分かりました。個人的には後年の大映映画のイメージのほうが強かったのでね。でもドラマの中でその個性が十分に生かされていないのが残念。そういえばウルトラマンタロウの「血を吸う花は少女の精」で無意味にグラマーな有閑マダムとしてちょい役登場してバラサの蔦に血を吸われてましたね。監督が新東宝出身の山際永三だったので、昔のよしみでの起用だったのでしょう。
■いわゆる幽霊犯罪もので、後に「ザ・ガードマン」などで繰り返し同じようなドラマが制作されますが、怪奇スリラーとしての完成度は大映のほうがずっと高かったですね。脚本のひねりが秀逸だったり、モノクロ撮影の陰影表現が優れていたり、演出家もちゃんと勘所を押さえて緩急のある演出で怪奇ムードを醸成するし、リテラシーが異様に高かった。

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