妄想OLはいかにして妄想を捨てて現実を直視するようになったか『勝手にふるえてろ』

基本情報

勝手にふるえてろ ★★★☆
2017 ヴィスタサイズ 117分 @アマプラ
原作:綿矢りさ 脚本:大九明子 撮影:中村夏葉 照明:疋田淳 美術:秋元博 音楽:高野正樹 監督:大九明子

感想

NHK地上波で始まった略称:かぞかぞ(『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』長すぎ!)がなかなかおもしろかったので、大九明子の過去作を探ってみた。自意識過剰で妄想癖がある24歳処女のOLがホント(現実)の愛を見つけるまでを描く、なかなか痛いお話。ちゃんと痛く描いているところが良いところ。

松岡茉優て、そもそも読み方がわからないし(わかります?)、そんなに美人でもないし、スタイルがいいわけでもないけど、確かに演技の質は高い。名前をみるようになったのも、最近だなあと思っていたら、なんと芸歴20年を超える大ベテランですよ。うまいのは当然ですね。ただ、主役の華があるかどうかは微妙だ。以上は、個人的な感想です。

脳内恋人①と現実に告られた男②の間で揺れ動き、①は自分の名前すら覚えていなかったことを知り、それまでの妄想が逆噴射するところが、中盤のおおきな見せ場で、実際ここのミュージカルシーンは痛々しくて秀逸だった。身体の中からフツフツと湧き上がり、歌にしか昇華できない痛ましい感情が、ちゃんとすくい上げられていて、ちょっと感動的だ。こうしたところに、大九明子の変な個性が生きている気がする。入江悠のラッパー映画の成功例はあるけど、日本映画のミュージカル演出としては、上出来。クドカンの『不適切にもほどがある!』の薄ら寒さ(それが狙いかも)と比較するとよくわかる。

■略称:かぞかぞでは、登場人物の挙動不審なさまが愛着を持って描き出されていて、いわゆるキャラづくりではない、はみ出した生々しさが非常に魅力的だったのだが、本作の松岡茉優はちょっと硬いと思う。略称:かぞかぞの河合優実や福地桃子や吉田葵がちょと出来過ぎなのかもしれないけど。

■そうそう、ちょっと先輩風なOLを石橋杏奈が演じて、ちゃんとハマっているのに感心した。『MM9』のあの子がねえ。。。成長したなあ。感慨無量だ。


© 1998-2024 まり☆こうじ